劇場公開日 2008年10月25日

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「アミダラがフシダラなことを・・・」ブーリン家の姉妹 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アミダラがフシダラなことを・・・

2018年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『エリザベス』が日本で公開された年に『エリザベス:ビギニング』のような映画を見られるとはラッキーでした。エリザベス女王が父親から受け継いだ宗教上の問題とか、ローマ教皇との確執の始まりとか、宮廷やヘンリー8世の対外的な問題にはほとんど触れず、ただ王の愛を勝ち取るかどうか、政略結婚に奔走する貴族たちの愚かしさ、そしてブーリン姉妹の確執と姉妹愛だけを描いたのも潔かったと思います。

 ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソンという二人とも好きな女優の共演とあらば見逃すわけにはいかない。演技はもちろん良かったのですが、それぞれアンとメアリーの史実に基づいたそれぞれのキャラが印象に残ります。出演者の衣装も素晴らしく、特にナタリー・ポートマンは緑のドレスが強烈。エリック・バナはこの緑を見てハルクが目覚めるんじゃないかと体が震えていたに違いありません・・・

 男子の生まれなかったヘンリー8世。その王に愛人を差し出してブーリン家に栄華をもたらそうと画策する姉妹の父親。王が選んだのは結婚したばかりのメアリーで、目論見ははずしたが、とにかく自分んちのことしか考えてない父親。結婚相手の夫もしぶしぶ妻を差し出す・・・権力には逆らえない絶対王制内の不条理だ。みんなどうかしてると思っていたら、アンが最も政略家だった。焦らしテクニックといい、男子を産んだメアリーまで追い出すのです。終盤は彼女が身につけている“B”の文字のネックレスが印象的でしたが、アンの血液型がB型なんだとばかり思ってた・・・それほどアンにも一族のためという使命感が備わってたんだろうなぁ。

 教皇を敵に回したことで宗教上の対立が起こる顛末を描いた『わが命つきるとも』。アカデミー賞を独占したこの映画ではトーマス・モアが主人公だったため、完全に外側から描いてましたが、王の離婚問題は歴史的にも大事件だということがわかります。いずれにしても個人的理由により処刑されたりして、住みにくい時代だったんだなぁ。一番可哀そうなのはジョージ・ブーリン(ジム・スタージェス)だったし。

 ちょっと気になる原題:THE OTHER BOLEYN GIRL。前半部分では自らそう呼んでいたナタリー・ポートマンだったけど、終盤ではそれがスカーレット・ヨハンソンだったとわかる。盛者必衰・・・めまぐるしく展開するだけに、大河ドラマのダイジェスト版のような雰囲気もあったけど、世界史好きにはたまらない映画だと思います。

kossy