モンゴルのレビュー・感想・評価
全16件を表示
マハ(肉)は世界に誇れるモンゴル語?
『蒼き狼』に高評価をしてしまった者としては何をどう書いてよいのやら・・・と、悩む暇もなく全編モンゴル語による壮大な叙事詩にのめり込んでしまいました。その見方というものが『蒼き狼』とは全く違うため、比較する術もなく、12世紀末の中央アジアにおける出来事にタイムスリップするかのように身を委ねる鑑賞法がベストなのかもしれません。
物語はテムジン(後のチンギス・ハン)の幼少期とジャムカとの再会や彼との確執、そして壮絶な戦闘まで。テムジン(浅野忠信)の知的な戦略による英雄伝というよりは、彼の父親が毒殺された上に部下の裏切りによって虐げられたり、メルキト族に射抜かれたり、ジャムカに負けて奴隷として売られたりと、弱々しい面を全面に打ち出したような印象が残ります。負けてばかりなのに世界の半分以上を統一したというテロップには違和感さえ覚えるほど・・・
根底にあるテーマとしては復讐の連鎖を強調したものであるし、テムジンが囚われていた期間にモンゴル族の統一を夢見て黙々と瞑想していたのではないかと推測したセルゲイ・ボドロフ監督の脚色が光ります。また、『蒼き狼』でも見られた息子の問題。自分の子ではないと知りつつも父親としての威厳を保つという、大らかで寛大な人物像も浮かび上がる。そして、兵は主人を自ら選ぶことができるというモンゴル族の不文律や、戦利品を全て部下に与えるという現代にも通ずる理想の上司像が魅力的なのです。
全編モンゴル語の映画なんてのは初めての経験でしたが、どことなく韓国語やギリシア語に似たところもあり、柔らかい響きが心地よかったです(眠くなるかもしれませんが)。そのモンゴル語を浅野忠信が流暢(よくわかりません)に喋り、日本人であることを忘れてしまうほど成り切った演技。誰もがCGだとわかるほどの血飛沫にも違和感を感じず、むしろ歴史ファンタジーとしてとらえるのもいいかもしれません。
ドラクエ8のやりすぎです・・・鑑賞中、メルキトと聞いてドラクエを思い出し、ドラクエ8のボスキャラであるラプソーンが朝青龍に似てるために親の仇であるかのように攻撃したことを思い出してしまいました。とにかく兵士やら建物やら、何でもドラクエに結びつけてしまったのです。その上、テムジンの敵が朝青龍だったならば・・・燃える・・・
【2008年4月映画館にて】
モンゴルは壮大だ。
壮大なモンゴルの風景が美しい。
風景描写へのこだわりが画面から伝わってくる。
内容は、チンギス・ハーンがモンゴルを統べるまでというよりは、若かりし頃の苦労話。
幼年期は逃げ続け、青年期は戦い続け、そして耐え続ける。
こんなに苦難の連続だったとは正直知らなかったが、作りとして何か一つ物足りなさも残った。
ありがちな大成していくまでの英雄ストーリーとは一線を画する内容は評価できる。
また、壮大でありながらどこか神秘的な『モンゴル』というものをうまく描き出して点も新鮮だった。
何より、モンゴルという国、モンゴルという風土、モンゴル人という民族について様々な発見ができたことはうれしい。
見る人間が何を期待するかによって感想は変わってくるが、新しい発見はできると思う。
草原に暮らす厳しさ
総合:75点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 85
音楽: 75
チンギス・ハーンの話をする以前に、とにかく厳しい時代である。野望と欲望が渦巻き強いものが弱いものを支配する。勝てば人でも物でも略奪し放題の天国、負けて生き残ってしまえば奴隷生活の地獄。現在の価値観が全く通用しないそのような現実が、壮大な大地を背景に繰り広げられていて、当時の草原に暮らす人々の直面している時代背景が良く語られている。残酷だけどこれが草原の掟なのだろう。
そしてやはりこの作品は映像が良い。美しくもありどこまでも続く緑の草原を見せてくれる一方で、荒涼とした山の峰や凍えそうな雪原といった、建物一つのない厳しさを見せる自然の風景の撮影が素晴らしい。衣装やゲルや生活の小物まで細かく作られていた。
物語は時々一気に年数がたっていたりして繋がりが悪くてわかりづらい。テムジンの歴史物語として全体を見るというよりも、彼の辛酸の歴史の部分部分を楽しんだりするものだと割り切ったほうがいい。
少年テムジンはいかにして偉大なる長になったか
チンギスハンの波乱の半生を、浅野忠信主演で描いたスペクタクル作品。
少年テムジンがいかにして偉大なる長・チンギスハンになったかの物語でした。劇場で鑑賞できて幸運でした。広大なモンゴルの風景に圧倒されました。
ロシアのセルゲイ・ボロドフ監督、2007年の作品です。
テムジンとジャムカ、並び立つ二人は信頼と敬意で深く結ばれていてなかなかアツいです。
妻となる女性との深い絆も描かれますが、甘さのない感情表現の少ない語り口は、神話や古い叙事詩のような乾いた不思議な余韻でした。
苦難の中から、モンゴル人の誇りを胸に因習を打ちこわしていくテムジン。演じる浅野忠信は、おおらかでカリスマ性があって良かった、モンゴル刀を研ぎ整える場面は印象的でした。
「初恋のきた道」のスン・ホンレイ演じるジャムカも力強く明るさを感じ魅力的でした。
(2012.10.19 シネフク大黒座 浅野忠信オールナイト)
テムジンは民主的な政治家?
浅野忠信主演のチンギスハーンの物語。
この作品でのテムジンの描き方は
かなり独特だと思った。
こんな描き方も、ありだ、と。
何度も挫折を繰り返しながらも、
不屈の精神で立ち上がってくる、
信念の人という観点で、
テムジンを描いていた。
事実はどうだったのかはわからないが、
冒険的な描き方であることは確かである。
そして面白かったのが、
この時代の女、子供の描き方である。
まるで戦利品の一部なのだ。
戦争に負けると妻を奪われ、
勝った時に取り戻す。
ついでにお腹の中にいる子供も一緒に付いて来るのだ。
その子の父親は誰なのかはわからない。
それを当たり前のように受け止める。
「蒼き狼」でも
テムジンの妻は一度奪われ
取り戻した時には妊娠していたから
これは公然の事実なのだろう。
それとテムジンが
何故あれほどの帝国を作る事が出来たかと
いうことを描いていた。
この時代には珍しく
彼の政治は民主的だったようだ。
その最たる事が富の分配方法で、
彼等の時代では親分の総取りだったのを、
テムジンはかなり部下へ別けてあげていたようだ。
もしかしたらそれが
彼の人気の秘密だったのかも知れない。
「蒼き狼」では、
妻が奪われ、取り戻した時には妊娠していたので、
血の繋がらない子供を受け入れる事が出来ない、
苦悩に焦点を当ていたが、
それは日本人的な感覚であり、
この作品を観たら、
そんなことに悩みを持つような
余裕など全然無い時代だった事が
よくわかった。
そんな歴史のお勉強をさせてもらいました。
「モンゴル人ならそうするわ」「俺は違う」
映画「モンゴル」(セルゲイ・ボドロフ監督)から。
(主役は、日本人俳優・浅野忠信さん)
「チンギス・ハーン」を題材にした映画や小説は、
幾多もあったと思う。
しかし、日本人が演じる「チンギス・ハーン」は渋かった。
その中で気になった台詞は「俺は違う」だった。
モンゴル人には、いろいろなルールや掟がある。
「モンゴル人は、子どもを殺さない」
「モンゴル人は、主を自分で決める」
「モンゴル人は、女のために合戦をしない」
「モンゴル人は、雷を恐れる」等・・
どの掟がいいのか、悪いのか、私にはわからない。
たぶん、朝青龍だってわからない。(笑)
基本的な考え方を尊重しながらも、
古い考え方、前例・習慣とも思えることには、従わない。
それを強調した台詞が「俺は違う」だった。
そして、その考え方が、最後には大帝国を築くこととなった。
この意味は・・自分を枠に嵌めない、ということである。
順風ではなかったのですね・・・
浅野忠信主演のカザフスタン映画、オスカー外国語映画賞ノミネートの映画見てきました。
ジンギスカンのモンゴル征服までの映画ですが、正直、内容は途中間延びして何度か睡魔に襲われてしまいました。知らなかったんですが、こんなに何度も拘束されてしまっていたんですね。拘束期間を見せられてもなー、と思っちゃいました。でも、彼の決して順風ではない征服への道を垣間見ることができて、人間、信念をもって突き進むって大事なんですね、と考えさせられました。
それにしても、浅野忠信の演技というかモンゴル語がまじで普通で、アメリカ人の友人にあれ日本人だよといってもいつまでも信じてもらえないくらいはまっていました。やっぱすごいです浅野忠信。ちなみに彼の映画では「鮫肌男と桃尻女」が一番好きですが・・・。それと関係ありませんが、ジンギスカンの幼少期の少年がレッドソックスの松坂に似ていました。宿敵の「兄弟」の幼少期は朝青龍に似ていました。ジンギスカンには1600万人の子孫がいるといいますからね。
重厚な芸術的表現
12世紀モンゴル統一を果たしたチンギス・ハーン(テムジン)の、壮大な“叙情詩”です。
昨年日本でもチンギス・ハーンの一代記を描いた、角川春樹制作の「蒼き狼」がありましたが、ロシア人監督セルゲイ・ボドロフの手による「モンゴル」は、比べ物にならない深遠な作品を作り上げました。
人間描写の重厚さ,映像の荘厳さ,音楽の脈動、言葉にならない表現から、作品の奥行きが伝わってきます。
作者の人格的な深みが、それらに現れるのです。
絵画,音楽,舞踊など、言葉以外による芸術でも、作者の思想,経験,人間観などが、否応なく表出されるわけです。
もちろんそこに技術(表現力)が伴いますが、技術とは実は作者の世界観そのものに他なりません。
「蒼き狼」の出演者は反町隆史、菊川怜ら日本人で、セリフも日本語ですが、「モンゴル」は全編モンゴル語で、役者もモンゴル人や中国人などです。
目のぱっちりした現代的な美形ではなく、いかにも12世紀のモンゴル人顔をした俳優陣が、リアリティある重みを感じさせてくれます。
アジア人役者の中から主役に抜擢された浅野忠信は、テムジンのカリスマ性を見事に体現していました。
モンゴル語のセリフを習得し、乗馬やモンゴルの殺陣も自ら演じています。
「蒼き狼」では、テムジンの幼少期から国家統一までの史実やドラマを、分かりやすく描いていたのに対し、
「モンゴル」はそれらを大幅に省略した分、テムジンの精神的な世界を表現していました。
テムジンの生涯には空白の期間があります。
ボドロフ監督は、その間彼は投獄されていたのではないかという説を取り入れ、映画の重要な部分に据えています。
獄中でテムジンは修行僧のように瞑想を深め、国家統一のための哲学を確立していったといいます。
まるで石仏のようなメイクと、浅野忠信の存在感は印象的でした。
勇猛さと慈愛を併せ持ち、独創的で自由な人間・テムジンを描き出した大作は、アカデミー外国語映画賞候補作です。
日本人も雷はコワイ。
アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされたことで
かなり話題を呼んだ作品。浅野忠信の名が一気に世界へ!?
後のチンギス・ハーン、モンゴル帝国を築くテムジンの物語。
角川映画「蒼き狼 地果て海尽きるまで」と内容はほぼ同じ
でしたが、肌触りがまったく違いますね。当り前か^^;
そして、かなり好き好きが分かれそうですよ~。少なくとも、
私には諸手を挙げて大絶賛!…という作品ではないかなぁ。
というのも、日本人には理解し辛い(それだけモンゴル的な)
思想のもとに描かれているので、例えばハーンの歴史を
知らない人などが観たら、う~ん?分かり辛いかもしれない。
角川映画の方は(社長が生まれ変わりだと言ってる位だから)
かなり英雄的に描かれています。ヒーロー漫画みたい^^;
でも本当のテムジンは、優しいけどけっこう自分勝手ですよ。
そういう(つまり、朝青龍を例にとると分かりやすいか^^;)
理解し難い裏切りとかを平気でするのがモンゴル民族です。
他人の妻を平気で盗るし、ボスが死ねばすぐに寝返る。
世話になった親友(血の兄弟)の部下をも平気で連れ帰ります。
そして何かといえば「雷神の元、我々は平等。」と主張。
忠誠心はあれど、恩義を独自の解釈で返すため
義理固い日本人には、そのあたりが理不尽に思えてしまう。。
浅野忠信の、やや退き気味な演技は良かったです。
一見おとなしそうに見えて、かなりしたたかに狙いを定める。
頭がいいので、的を外さない。そして幽玄なカリスマ性。
世界を制覇する人間の洞察力は、やっぱり違いますね~!
個人的にジャムカを演じたS・ホンレイがかなり良かった。
怖いんだか優しいんだか分からない顔をしてますが^^;
浅野とは対照的な押しの演技。ジャムカはいい男でした。
もし彼がいなければ、テムジンはチンギス・ハーンには
なれなかったと思いますもん。いい盟友でしたよ、彼は。。
(でも一番したたかで賢いのは、妻ボルテだったりする^^;)
モンゴル人の魂を感じた
映画の題名がチンギス・ハーンではなく、モンゴルなのはなぜか。単なる好戦的な夷狄と思われていたモンゴル民族の人間像を捉えなおしたかったではないだろうか。
過酷な少年から青年期を生き抜いたテムジンは、皆が従う掟がない限り無駄な戦い、無駄な死が続くと考えた。女子供は殺さない、ハーンには絶対に従うなどの掟に従わせるべく闘いを続ける。
義兄弟の契りの義理の深さ、夫と妻の信頼の深さ、公平さ、不屈の闘志が主人公の人間性を深め、勇者としての名声に加え、指導者として従うものも増えていく。彼の掟はそうした生き方から導き出されたものであった。
抑えた台詞と動きの少ないシーンが多く、少々わかりにくくじれったく感じるところもある。しかし、モンゴル民族の魂を高め一つにまとめあげた、彼の精神性の高さ、太さを感じることができた。
侍・浅野忠信!
いい国作ろうモンゴル帝国。
壮大な人生を2時間弱で表現するの難しい。。。
モンゴルの壮大な自然がとても美しく、英語でなく現地の言葉を使っていたり、作品へのこだわりを感じられる映画です。
見てみる価値あり!
残念な点は、少年だったテムジンが、ハーンになるまでの壮絶な人生を短時間で表現しきるのは難しく、ストーリー展開が急すぎて感情移入が出来ないまま終わってしまったところ。
才能があふれていて100点でした
50億円の製作費とロシアの監督、世界各地から集まったスタッフ、そして浅野忠信ほかのキャストの才能が結集している作品に仕上がっている。
チンギス・ハーンの幼名テムジンの9歳からのモンゴル統一までの物語で、子供時代の子役は目に力があり、青年時代を演じた浅野忠信の存在感は赤じゅうたんを歩く資格は十分の演技。妻のボルテも、演じている役にひけを取らぬたくましさをかもし出して見事だった。
草原に映し出す季節感、子供の成長で年月の経過をみせる映像もすばらしい。この映像による補足でストーリーもわかりやすく、理解しやすかった。
ロシア財力とアジアの才能で映画制作するのはWELCOME。「ちかごろハリウッドの映画にあきてきたのよ」ってことなので。
考えてみると、
全16件を表示