「動物園が果たす役割。」旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
動物園が果たす役割。
しつこいくらい?上映前によく流れていた予告編は、
動物たちの可愛い、あったかい、そんな姿の映像ばかりだった。
なので…わりとほっこりとした?動物主体の作品になるのかと
そんな風に思って観に行ってみたら、そうではなくて^^;
けっこうシビアにビジネスライクな内容の作品になっていた。
まぁ…それもそのはず。あの旭山動物園だもんなぁ(と気付く)
廃園寸前の動物園をいかにして立て直したかを描いた本作。
やや男臭い飼育現場を舞台に、動物達への愛情を注ぐ一方で、
繁殖成功までの過酷な道のりや、仲間同士の対立、非業の死、
ついに廃園を余儀なくされるまでの闘いはやはりプロジェクトX!
しかしアイディアと行動力を武器に楚楚と這い上がるところなど
さすがで、これは動物園でなくても興味をそそられる内容だった。
私達がただ、可愛い~なんて思って訪れている舞台裏には、
こんなしのぎを削る奮闘努力があることを改めて思い知らされる。
で、マキノ監督だからというわけではないけど^^;
映画を作るのにも莫大なお金がかかる。好きなものに関われる
歓びと引き換えに「利益を得る」ことが必須条件とされるのが
エンターテインメント業界の掟だ。好きなだけでは飯は食えない。
当たり前のことだが、どこも厳しい世界だと感じた。
客足が伸びないために、財政難の市政にはそっぽを向かれ、
だったらどうするか?どうすればお客さんを呼び戻せるだろうか。
加えて、動物達本来の行動力を示すことはできないだろうか?
逆境は「行動展示」という新たな試みを生み出すことに成功した。
私は動物園が好きだ。なくさないで欲しいと思う。
動物本来の生態は実際に見て学ぶものだが、そう易々とサバンナ
には行かれない。小さな頃から他の動物を慈しむ心を育てるには
お互いが(人間主体になるが)安全に鑑賞し合える場所が必要だ。
動物愛護団体が、園長にイチャモンをつけるシーンがあったが、
あれこそ愚の骨頂。虐待の本当の意味を知っているのだろうか。
雌チンパンジーの妊娠中毒症を治すため、餌を半分以下に減らし、
お腹が空いて喚いている彼女を前に「ごめんな。ごめんな。」と
泣きながら餌をやる飼育員、情緒不安定の動物に添寝する飼育員。
動物を育てるということは、子供を育てることと何ら変わりない。
まして言葉を発しない動物の心を、読み取り理解する努力なくしては
愛情など受け入れてもらえない。「責任」は常に重いものである。
小さな頃獣医さんに憧れ、ダメなら動物園に勤めたいと思っていた。
夢を叶えることが、動物達の幸せに繋がるのなら、言うことはない。
(最近は動物にも過度なストレスが溜まるから、休養をたっぷりと。)