「ラースと、町の住人たち。」ラースと、その彼女 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ラースと、町の住人たち。
名画座にて。
ずーっと、ずーっと、待っていた作品だった。
観たくて、観たくて、たまらない作品だった。
そしてやっとのことで鑑賞。。
アカデミー賞脚本賞にノミネートされたという本作は、
オタク青年とリアルドールのコメディのように思わせ、
実は人間の細部に潜むトラウマとの真摯な闘いの日々、
些細なうえに温かく、まどろっこしくて尊大な作品だ。
ラースがなぜ、このリアルドールを購入し、
疑似恋愛に走ってしまったか。。実は悲しいその部分に
笑いや驚きを織り交ぜ、人間はひとりじゃないんだぞ。
と強く強く思わせてくれる作品だ。しつこいまでに彼に
関わりを求める周囲の人々は、なぜこんなにも他人に
対して優しくなれるのだろう。辛抱強くなれるのだろう。
私達に一番足りないのはここだよ。と言わんばかり。
思い通りにいかない人生、運が向くまで待ったっていい。
そんな生き方があってもいいじゃないかと思わせる。
母親の死のショックと、人付合いが苦手だった父の影響で、
極端に誰かと関わることを嫌がるラース。かといって、
人格破綻者などではなく、単に恐怖心が先行しているのだ。
それを解きほぐすことは容易ではないが、いとも簡単に
ビアンカは(爆)彼の家に乗り込んで彼の心を占領してしまう。
彼が、そうしたくて、そうしたのだから、周囲は彼を信じ、
彼がその妄想(というか物語?)を完結させるまで付き合う。
ビアンカはパーティに出席し、慈善活動に勤しみ、散髪し、
家では食事も着替えも他人の手を借りて、風呂にまで入る。
笑えるというより…次第になんとも心苦しくなってくるのだ。
人々の奉仕に。(爆)
彼を診察する医師、P・クラークソンの抑えた演技が素晴らしく、
こんな先生に治療してもらえたなら…と心から思った。
兄嫁、E・モーティマーが天使のような人柄の人間像を創り出し、
彼女の徒労あってこそのラース復活だと思わせる。
後に彼が好意を抱くマーゴ、K・ガーナーの愛らしさはピカイチ、
女性陣の演技は彼女たちのおかげ!と思えるほど素晴らしい。
静かで雪深い街並、少ない台詞とセクシーなリアルドール(爆)
ラースが握り返した手の温もりに、深深と泣けてくる感動作だ。
(ビアンカって背中までセクシーなのよねぇ。チト触ってみたいv)