「いつかわかる真実。」さよなら。いつかわかること ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
いつかわかる真実。
名画座にて。
J・キューザックの演技を映画館で観るのが久々だったので、
あ~懐かしいなぁ…と思う間もなく、彼の風貌に圧倒された。
かなり太った?(役作りか)身体をのっしのっしと揺すりつつ、
両手は前に垂れ、やや疲れ切った表情で前のめりに歩く彼…。
いや~すごい。これだけでもう私は泣けてきてしまった。
彼が演じたのは元・軍人で、今はイラクに派遣されている妻を
待ちわびながら、娘2人を育てている父親。彼の過去に何が
あったのか、この時点ではまだ語られていないのに、すでに
彼は身体全身でその男を体現していた。。これぞ役者だー!!
おおよその内容は分かっていたけれど、冒頭で「よかった」と
言えてしまう作品に出逢えたのが、まず嬉しい…。
愛する人を失ったことがあるなら、なおさら。
そうでなくても、想像するだけでその哀しみは分かると思う。
私は経験者の一人なので、痛いほど彼の気持ちが分かる。
彼は、子供に妻の戦死を伝えられない。。
というより彼自身が、まだそれを受け入れる段階ではないのだ。
戦地へ赴いたのだから、もちろんいつそうなるとも分からない。
そんな状況だったとしても、やっぱり辛い。まさか…と思う。
彼の場合、子供を育てている状況だったから、
子供たちにどれだけ母親が必要なのかを痛感していたはずだ。
もしも自分が、妻の代わりに戦地に行けていたなら、
娘たちは母親とこの先ずっと生活出来たかもしれなかったのだと、
悔やんで忍び泣く彼が、この上なく哀しかった…。
突然、今までの厳しい態度から一転。セキを切ったように、
「娘たちを連れて遊園地へ行く!」という計画を立てた彼。
価値観の合わない弟(彼も重要)の反対を押し切り、出発する。
いきなり父親のテンションが上がったのにビックリする姉妹。
勘の良い長女は、だんだんと気が付いてくるんだけど、
父親が受け入れられないものを、娘が理解できるはずもなく…。
癒しの旅。を続ける彼らが辿り着く海で、やっと真実を迎える。
辛いことに向き合う勇気は、逃げることより遥かに難しい…。
だけどタイトルにもあるように(このタイトル、上手いと思った)
すべてが、いつかわかること。なのかもしれない。
これからの彼らに必要なものは「時間」なのだ。
ただもうひとつの真実は、彼らの愛国心や価値観が揺るぎをなす
とある戦争の実態を知った時、真に訪れるものなのかもしれない…
と思うと、母親の死をどう受け止めるかは、まだ続くことになる。
ひょっとして製作者側は、それを言いたかったのかな…とも思う。
(愛国心は、生命を大切にする人間愛の上に成り立って欲しい)