「かっこいい!、還暦オヤジよ、永遠なれ」ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
かっこいい!、還暦オヤジよ、永遠なれ
映画がはじまりだした途端、監督のスコセッシとストーンズのメンバーとの静かな対立がつづく。ステージ・セットとカメラ位置に神経をすり減らすスコセッシ。しかし、ステージの作り方に疑問があったメンバーは、スコセッシにライブの曲順も何も知らせないという反抗を企てる。スコセッシは、はじまりの曲を予想しながらカメラ位置を決めて、さあステージの幕があがって一曲目はジャンピングジャックフラッシュ!...
さすがスコセッシ、最初から観客をドキドキさせて熱狂のストーンズ・ライブに導かせるなんていう、味な演出を見せてくれた。そして、ライブ中のカメラワークのうまさは、メンバーとごたごたなんかあったことなど忘れてしまうくらい(いや、最初からごたごたなどなかったと思うが)に見事!。ライブ演出のうまさも、さすがスコセッシと唸らせるものだった。
ただ、ミュージシャンのドキュメンタリーに名作も数多いスコセッシの作品としては、物足らない部類、と観た人の中に感じた方は多いかもしれない。確かに、過去のストーンズへのインタビュー映像はたくさん挿入されているのに、今のストーンズへのインタビューがほとんどないのには、ちょっと不自然には感じた。
しかし、昔のインタビュー映像を観るうちに、おそらく、同じことを聞いても昔と変わらない返答をストーンズのメンバーはするだろうし、ステージ上にストーンズそのものがあるのだから、今のインタビューは必要ないようにも感じるようになる。ストーンズのもつ迫力、ストーンズの真実とは、彼らの音楽そのものなのだ。
そのストーンズのライブについて、あれこれ言う必要はないだろう。還暦になるというのに、パワフルに動きまわるミック・ジャガーの迫力は凄まじいものだし、名曲の数々には観ている者もスクリーンの観客といっしょに立ち上がりたくなるくらいにノリノリになってくる。他にも、バディ・ガイが奏でるこてこてのブルースギターの音色、ドスのきいたクリスティーナ・アギレラの声量など、見どころは枚挙にいとまもないほどだ。
個人的には、キース・リチャーズのかっこよさに魅了された。特に、曲と曲のあいだにピックを観客席に投げる仕草なんて、キースじゃないとかっこよく見えないだろう、と思わずにはいられないものだった。そして、観終わったあとには、メタボな奴はストーンズのかっこよさなど真似できない、ことにシミジミと嘆くばかり、なのである。