劇場公開日 2008年3月8日

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スルース : 映画評論・批評

2008年3月4日更新

2008年3月8日よりシネスイッチ銀座、新宿バルト9ほかにてロードショー

2人の間で醸成されていく“空気”に迫った新しい「スルース」

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70年初演のアンソニー・シェーファーの戯曲を「イヴの総て」などで知られるハリウッドの巨匠ジョセフ・L・マンキウィッツ監督がローレンス・オリビエ&マイケル・ケイン主演で映画化した「探偵スルース」(72)。そのリメイクに当たる本作は、ジュード・ロウとマイケル・ケインという新旧の「アルフィー」が、妻を寝取った間男マイロ・ティンドルと寝取られた老作家アンドリュー・ワイクに扮し、ロンドン郊外にあるアンドリューの豪邸で虚虚実実の心理戦を繰り広げる。

オリジナル版の牧歌的でモノに溢れていた邸宅から、スッキリと整理されたハイテク近代建築の豪邸へと舞台を移して行われる今回のゲームは、2人の言葉の暴力が際立ち、観客が2人に感情移入する余地を与えない。とりわけ、ケイン扮するアンドリューの嫌らしさは絶品で、さすがは2度のオスカーに輝く名優といった巧さ。やがて、2人による丁々発止の駆け引きが終盤にさしかかると、映画の重心は2人の勝負の行方から、アンドリューがゲームを始めた目的へと動いていく。

ハロルド・ピンターによってリライトされた今回の脚本は、オリジナル版が持っていた物語の意外性を弱めて、不毛なゲームに興じる2人の間で醸成されていく“空気”に迫る。脚本ピンター&監督ブラナーによる本作は、あくまでゲームの勝敗にこだわったオリジナル版を換骨奪胎し、新たな「スルース」として生まれ変わっている。

(編集部)

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