「ちくちくする、家族のお話」歩いても 歩いても きのこの日さんの映画レビュー(感想・評価)
ちくちくする、家族のお話
もっと早く見ればよかった。
ずっと気になりつつ、是枝監督に対する不安があって避けてしまっていた作品。
というのも是枝監督の作品はワンダフルライフとDISTANCE以来、抵抗があって見れず。
空気人形はとっても好きだったんですが、どうしても拒否反応があって。
でも見てよかった。
ちくちくする、家族のお話でした。
わたしのすきなやつ。
皆わかってるのに、できない。いたわってあげたいのに、あげられない。
素直になりたいのに、なれない。
そんな家族のおはなし。
原田芳雄と樹木希林がすげぇ。
樹木希林が、もう演技なんだか本物なんだか本当にわからん。
そして、原田芳雄さま。
最近「大鹿村騒動記」で拝見したんですが、その時ともまたまったく違う方に見える。
本当に素晴らしい俳優さん。
心からご冥福をお祈りします。
映画とか音楽ってすごいなあ。感じ方はいつの時代も変わっていくけれど、どんな時も素晴らしい作品はずっと変わらずにそこにある。
名曲や名作は何年、何百年たっても色あせない。
昔は好きだった曲や映画を、今いまいちだと思ったら、よくもわるくもきっと自分が変わった証拠。
だってそのものは変わらずずっとそこにある。
夏川結衣もすごいよー。やっぱすごいよー。
初めての旦那の実家に泊まるの緊張してる感じとか、新しいパジャマが阿部寛の分しか用意されてない事に対する小さな怒りとか、すごくよくお酒を飲むんだけどそれに対してさりげなく樹木希林が言う「昔は女はグラスの底は見せるなって言われたもんだけど」っていうセリフに表情をこわばらせる感じとか。すげーよー
なんかすごく印象的なシーンがいっぱいあって、私自身がすべてを受け止め切れているかわからないけど、どうしてもご紹介したいシーンをひとつ。
家の中に入ってきたモンキチョウを樹木希林が長男が戻ってきているといって追いかけ回したシーンの後。
今日おばあちゃん変だったねって言うあつしに、夏川結衣が「おばあちゃんにはそう見えたのよ、きっと」って言う。
そしたらあつしが「もう居ないのに?」っていう。
それに対して、夏川結衣が、「お父さんだってちゃんと居るよ、あつしの中に」って言うの。
わたし、正直「人は死んでも心の中にいる」っていう言葉すっごい嫌いだったんです。
きれいごとっていうか、居ないし、死んでるしって私も思ってた。
でも実際に自分がそういう事を体験して今思うのは、心の中にとか記憶の中にとかじゃなくて、本当に居る。
死んだっていう事がまだ実感できてないって言うのもあるとは思うけど、本当に居る。
それに対して、うまく言葉にできなかった自分に、夏川結衣演じるゆかりさんが答えをくれた。
「あつしの半分はパパで、半分はママでできてんだから」
そっか、結局そうだよなって思った。
わたしの半分は、どうしたって彼からできてる。
だから、死んだって、なんか居るんだ。
そんで、そのあとあつしが、「じゃありょーちゃんは?」(りょーちゃん=阿部寛、再婚相手)って聞くんだ。
それに対する答えが、私がこう答えて!って思ったのと一緒で嬉しかった。
「りょーちゃんはね、これから入ってくんのよ」
あー、素敵なお母さんですね。
そう、あつしくん、これから君を形作るものの中に、りょーちゃんがいるんだよ。
じわじわ、じわじわ。
や、本当に幼少期に父親を亡くして、新しい父親とやっていかなければならない少年の気持ちは私にはわかってあげられないけれど。
でも、全部そのままで生きていってねって思いました。
あなたをはじめに作ったのはパパとママ。
これから一緒に成長していくのはりょーちゃんとママと。
だからパパも消えるわけじゃなくてずっといるさ。
はー、長くなりました。
でもとっても好きな作品。是枝ファミリー勢ぞろいですみたいな作品。寺島進とかも何気に出たり。
家族のお話が好きな方は是非見ていただきとう。
今日という日を、愛おしくてたまらない、そう思える人になりたい。
家族も、自分の周りのすべてを、愛せる人になりたい。
そう、思える人になりたいなって思った映画。