「【親にとって、子供は幾つになっても大切な存在。取り分け母親は・・。妻帯者にはかなり、身の引き締まる作品でもある。】」歩いても 歩いても NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【親にとって、子供は幾つになっても大切な存在。取り分け母親は・・。妻帯者にはかなり、身の引き締まる作品でもある。】
■印象的且つ怖いシーン
1.阿部寛演じる良太が、久しぶりに兄の命日に横浜にある実家に、妻(夏川結衣)と妻の連れ子の男の子とともに訪問するところから物語は始まる。
良太の母(樹木希林)は嬉しそうに、良太の姉(YOU)と料理を作る。トウモロコシのかき揚げなど・・。
良太の父(原田芳雄)は町医者だったが、現在は楽隠居。だが、気難しく良太とはそりが合わない。亡き兄”しゅうへい”が後を継ぐ筈だったが・・。
ーここでの、良太の両親の何だかんだ言いながらも、嬉しそうな姿。親というものは、そういうものなのだろうなあ・・。-
2.”しゅうへい”が海で助けた太った青年が、供養に訪れるシーン。父は”あんな奴のために、しゅうへいは・・”と怒りを露わにするが、母は何気ない素振り。
ーだが、その夜、”もう呼ばなくて良いのでは・・”と言った良太に対して、母が強い口調で言った言葉。
”だから、呼んでいるんだよ・・。、あの子にだって、年に一回くらいは辛い思いをしてもらわないと・・”
母親の我が子を失った無念がヒシヒシと伝わる場面である。樹木希林さんの思い詰めたような表情が凄い。-
3.二世帯同居を望む姉夫婦が帰った後、老夫婦と良太の家族が鰻を食べるシーン。突然、母がレコードを聴こうと言い出す。
流れる”ブルーライトヨコハマ” ”歩いても,歩いても・・”
微妙な空気が流れる。特に父の複雑な表情。
父が入浴中に、衣類を替えに来た妻に聞く‥。”アレ、いつ買ったんだ・・”
明るい声で”貴方が、あの女のアパートに行っていたとき・・。貴方が歌っていたでしょう・・。良太を背負って聴いていたのよ・・”
ー怖い、怖い、怖い、怖い・・・。
浮気していた時から、ずっと聞いていたのでしょうか・・。今作品中、一番怖かった場面である。-
4.亡き息子の写真の上に黄色い蝶が舞い止まるシーン。蝶を”しゅうへいよ・・”と呼びながら追いかける母の姿。
5.母の良太の妻に対する言葉遣い。
ー母親にとって、息子を奪った人間には、ついキツイ言葉を述べてしまうのかなあ・・。樹木希林さんの穏やかな声で言われると更に怖い・・。ー
<ある家族の、10数年前に海の事故で亡くした子供の命日に集まった二男家族、娘家族と老夫婦が過ごす2日間を描く中で、親の子を思う気持ちを絶妙に描き出した作品。
是枝監督が、”家族”をテーマとし、本格的にエンタメ色を出し始めた作品でもある。>
<2010年頃、DVDにて鑑賞>
<2020年8月26日 他の媒体にて再鑑賞>