「.」黒い家(2007) 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。原題"검은집(英題"Black House")"、貴志祐介原作による邦画『黒い家('99)』の韓流リメイク作。全篇に亘り、元作よりもタイトに絞った印象で、ユーモアな息抜きが一切影を潜めたより張り詰めた緊迫感に溢れ、ホラー色が色濃く強調されている。更に幼少期の弟の死がトラウマとなり、人と社会の関り方がウエイトを占めるプロットに大きく変更されている。痛い描写もしっかり追加されており、クライマックスはよりスリリングで衝撃的に変更されている。元作と比較するよりも別物として観るべし。70/100点。
・元作と較べると、“トンプ生命”社内で上司等とのユーモラスな遣り取りが割愛され、K.ソヒョン演じる恋人“チャン・ミナ”やJ.インギの“オ”刑事をメインとした警察との折衝やコンファレンスが繰り返され、登場人物が減った分、人間関係が密に描かれている。ボウリングや水泳、寂れた地方都市と云った小道具は使われず、消火器は同じ様な扱い、そしてブランコがクローズアップされ、ラストに直結する重要なアイテムとして登場している。
・社会不適合な犯人を“人と関ってはいけない怪物”として突き放す一方、それでも人間であると歩み寄り、手を差し伸べる温かな救いの目線も折り込まれている。総じて元作よりも、よりヒューマニズムに重きを置き、追求した内容となっている……以上、やはりリメイク元の邦画と比較すると、違ったテーマが浮き彫りとなり、並列に扱うのがナンセンスに思える。
・前半の虐げられ、媚びた様な侘し気な表情と後半の一転した偏執的な輝きに満ち溢れた“シン・イファ”のユソン、そして一見頼りなげだが鬱屈した憤懣を貯めてそうな“チョン・ジュノ”のH.ジョンミン、この異彩を放つ演技達者な二人が居て成り立つ作品であろう。ところで幼少期の“シン・イファ”を演じたP.ソヨン、垂れ目で可愛かった。
・鑑賞日:2017年3月31日(金)