悲しみが乾くまでのレビュー・感想・評価
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デル・トロの演技が見事
『しあわせの孤独』『アフター・ウェディング』『ある愛の風景』のスザンヌ・ビア監督最新作で、この作品はハリウッド進出の第1作目。
毎回手を替え品を替え、色々な“不道徳な愛”を提示するスザンヌ・ビアだが、今回を含め常に高いレベルで大人の愛を見せるその手腕には感心する。
但し、今回は“愛”と言うよりは寧ろ“好意”と言った方が適切か。でもその事で、これまで彼女が描いて来た様々な《不倫》の物語は、単純な不倫と比べてやや異常性が勝っていた部分もあり、人によっては嫌悪感を与える内容でもあったと思える。だからこそ今回の“好意”に近い恋愛感情から気持ちを通じ合わせる話しには、アメリカの多くの人が抱える《薬物中毒》とゆう問題点はあるものの、万人の人が共感出来る内容にはなっていると思いました。
主人公の2人の、ハル・ベリーとベニチオ・デル・トロが、始めの内はギクシャクしているのだが、段々と気持ちが通じ合って来る辺りの演技合戦が何と言っても見所の一つ。
登場場面からしてデル・テロは、他人の煙草の火を指で揉み消したかと思うと、自分が吸っている煙草を根元まで吸い付くす等、異常なキャラクターを巧みに表現しており、それでいて子供とのコミュニケーションはしっかりと取る辺りの魅力的なキャラクター設定は、演出・演技が共に一体感が出ています。特に終盤でのデル・テロが禁断の薬物に手を出してしまう辺りの演技は、この作品での最大の見せ場になっていますね。
ハル・ベリーも一時期の低迷があったものの、この作品における夫の死をどこかで受入れたくない“妻”の心理と、目の前にいる薬物中毒の男を助け出す事で、何とか気持ちを払拭出来るかも知れないと考える“女”の心理を見事に体現していたと思う。
“善は受け入れろ”との言葉を、自らの勇気を持って表現するデル・テロの独白で締める最後は鮮やかでした。
「R2D2なら…」のセリフには同感です(笑)
(2008年3月31日シネカノン有楽町1丁目)
いつか互いに感謝する。
名画座にて。
この女性監督の作品は、何故かこういう感じのものが多くて
幸せに満ち満ちた家族の崩壊劇…というか(・・;)
カタチよりも精神面に重きを置くような描写をするのが
得意?なのかなぁ…。相変わらずズシンズシンくる感じです。
おまけに今回、
重さにおいては(精神面での)ピカイチコンビのお二人が共演。
優しい夫の突然の巻添え死によって、精神を病みつつある妻が、
夫の親友で、大嫌いだったジャンキーの男を家に招きいれ、
家族ゲームのように半同居をし始める…というお話。。。
普通なら有り得ないようなことを選択する妻を見ていて、
おかしいと思うか、痛いと感じるか、観客を試している感覚。
でも私には、これはアリだよな…と思えました。
極限の悲しみに襲われた時に(まだそれを受け入れられない)
人間は思いもよらない行動に出たりしますし、
それを機に「忘れよう」とか「前を見なくちゃ」とか
様々なことを考えるものです。そうやってがむしゃらに
もがいているうちにどんどん時が流れ、悲しみが和らいでいく…。
自分が立ち直るまで関わってくれたすべての人に感謝したい、
私はこんなに幸せだったんだ…と過去を振り返れるまでの間、
誰もが誰もを利用します。人を介し、自分を確立させるために。
そのリアルな演技と生活描写が痛みを感じさせるものの、
関わる人間たちのなんと温かく、慈悲に満ちていることか。
夫が精魂こめて尽くした日々を、妻が理解し、
共感出来るまでの道のりを、ヒリヒリと感じさせる描き方が
かなり独特な余韻を残す作品となっています。
(どこかで線引きするのが女性独特の癒され方かもしれません)
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