「ロハスを絵に描いたような作品です。とても癒されました。」西の魔女が死んだ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ロハスを絵に描いたような作品です。とても癒されました。
ロハスを絵に描いたような作品です。
風のささやき。
木々のこすれあうざわめき。
小鳥たちのさえずり。
小川のせせらぎ。
まずは冒頭の音でもう魅了されました。
主人公のまいが登校拒否になって、山のなかのおばあちゃん宅に預けられた時から始まる高原の自然に囲まれた暮らしのシーンでは、まるで登場人物になって森林浴を満喫しているかのような気分になってきました。
このおばあちゃん、どう見ても外人さん。実はまいのお母さんはイギリス人のおばあちゃんと日本人のお父さんの間に生まれたハーフだったのです。そしててもう一つの秘密。実はおばあちゃんの家系は代々魔女の家系で、おばあちゃんも魔女だったのです。
あっさり魔女であることを認めたおばあちゃんに、まいは魔女修行を志願しました。ところがこの魔女修行というものは、まか不思議なものを追い求めるのでなく。むしろ念や呪縛の飛び交う魔法世界にのめり込み、自分を見失わないようにするための精神力を養うことが徹底されていたのです。
早寝早起き、食事をしっかり摂り規則正しい生活をする。
人の考えに安易に流されず自分で決断する。
決断において、直感も大事だが、直感に執着すると失敗するので、こだわらないこと。
結局小地蔵流にいえば。仏教の「八正道」と同じことを「西の魔女」は語っていたのでした。正しく見ること。正しく語り、正しく思うこと。正しく仕事をし、正しい生活を送くること。仏教でも正しい心を見つめるという自己観照を続けていくことで、暴れ馬のような自分の心を自然と律することが出来るようになり、やがて精妙になった心に般若の扉が開かれることが謳われております。
悟りに洋の東西はありません。きっと「西の魔女」は、悟りに向かう道筋を知っていてて、それをまいに伝えようとしたのでしょう。
その証拠にこんなに深いやり取りが描かれています。
まいは、「西の魔女」とのやり取りの中で「魂」というものに興味が湧きます。まいのお父さんは、死んだら、今までどんなにがんばって生き、努力したことが全部「無」になるのだというのです。まいは、自分が生きてきた事実が全部一瞬で消え去ることに怖さを感じて、ふとんに入って「西の魔女」に質問します。
人は死んだらどうなるの?
「西の魔女」は、答えます。
この肉体は、いつかは朽ち果てる時が来るけれども、そうしたら魂は肉体という縛りから脱出して、自由になれるの。魂はずっと続いていくのよと。まいは目を輝かせます。いま感じてていることがずっと残るんだ。もっと自由になれるんだと
そこでまいは、すごくいい質問をするのです。
じゅあなんで、苦しい思いをしてまで、魂は肉体に宿るの?
「西の魔女」の名回答。
魂は肉体に宿ることで、いろんなことを観じたり、体験できるじゃない。経験する
ってことはとても大切なことなのよと。
ふたりの会話は実はとても深いいのちの真理を解き明かしているのです。
でもその伝え方は、ゆっくり楽しく!
映画自体も観客がまいと一緒に、「西の魔女」の価値観に違和感なく馴染んでいくために、ロケ地の清里の美しい風景をふんだんに見せながら、孫と祖母の営みをとても丁寧に描いてて行きました。
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おいしいワイルドストロベリーの作り方
ゆっくり眠れるおまじない。
そして、「西の魔女」が帰天するときの秘密の約束。
まいの好きな言葉。それは「おばあちゃん愛してる」とまいがいうと必ず微笑んで「I know」と英語で返してくれること。学校では、周囲に合わせることに気を遣いしすぎて、身も心も疲れてしまっていたまいにとって、このひと言にどんなに癒されたことでしょう。そのかけがえのない愛おしさ、愛に包まれる歓びをたっぷりと画面を通じて分かち合えることが出来ました。
こんな優しいおばあちゃんがいて、自然に囲まれる暮らしをしていたら、まいの心が立ち直ってていくことも頷けます。
でも、ある事件でまいは、「おばあちゃん愛してる」と言えなくなっててしまいます。それがあったから、最後のメッセージで、いつもの言葉に触れるとき、きっとこれを読むあなたも、涙ぽろぽろと感涙してしまうことでしょう。
決して人ごとではありません。
やがて三途の川の川岸であなたさまをお迎えする小地蔵からいわせば、この作品でまいが体験し、感じる全ては、みなさんもどこかで共有せざるを得なくなることです。
あなたさまおひとりおひとりが、悩めるまいなのです。
流暢な日本語と全身で与える愛を表現した「西の魔女」役サーチ・パーカーはほとんどなりきりモード。主演のまいを演じた高橋真悠も、半年間もかけたオーデションで見つけてきただけに、思春期の感情の起伏が激しい少女をごくごく自然体で演じていて、すごいなぁと思いました。魔女の家の修繕役で活躍する木村の兄ぃも怪しさを醸し出しつつ、最後は台詞はいい味出てましたね。
そして、エンドローンの主題歌でもジーンと泣けてきました。ぜひじっくり聞いて下さい。
清里には、ロケセット「西の魔女の家」が残されているようなので、ぜひ立ち寄ってみたいですね。