「ARATAがイイ。」蛇にピアス ちはれさんの映画レビュー(感想・評価)
ARATAがイイ。
大変痛い描写の多い映画で、途中何度か目をつむりました。
映像の綺麗さや俳優陣の気合いの入れようがすごく、
直球に19歳の「ヒリヒリ感」が伝わってきました。
一方で、もとの小説を表現しきれなかった(しなかった?)部分もあり、
その後小説を読んで「なるほど」と納得したところも多々ありました。
この作品は、後半までずーっと それぞれの本名や家族構成が出てこない。
それは主人公のルイ(吉高由里子)にとって「どうでも良いこと」だったからなのだろう。
小説に関しても同じく、作品のなかでそれぞれの生い立ちはもちろん、
ルイの生い立ちでさえ描写されることはない。(映画で割愛したのかと思ってたのだけれど違った)
そうすることによって、「現実感のなさ」がより表現されていた。
夢の中で生きているような女は、痛みやセックス以外で「現実感」を感じることはできないのだ。
私はこのような世界で生きたことがないけれど、
確かに「何も感じない」状態になったことはある。それも、つい最近のことだ。
20代前後の人は多かれ少なかれ感じることなのかもしれない。
美味しいものを食べても、笑っていても、
どこかで違う自分が自分のことを冷めた目で見ている。
無気力で無感動な日々。
世の中への絶望、世界に自分の居場所を見つけられないむなしさ。
表現しきれなかったところもあると感じるけれど、
意欲作であることに間違いはないと感じた。
なんだかんだでエロ・グロが多いので一緒に見て気まずくなる人とは見ないでね。
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