劇場公開日 2008年12月6日

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「良くも悪くもテレビシリーズのまんま、もっと只野を徹底して追い込む展開はなかったかなぁ~」特命係長 只野仁 最後の劇場版 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5良くも悪くもテレビシリーズのまんま、もっと只野を徹底して追い込む展開はなかったかなぁ~

2008年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 東京国際映画祭でいち早く見てきました。生で只野係長とも遭遇しました。演じる高橋も映画化には、意外だったようです。番組自体の始まりが深夜枠で、通常のドラマの3分の2の低予算ドラマから出発して、まさか劇場映画になるなど、高橋もスタッフも予想外だったそうです。
 意気揚々、気合い入れて映画製作に臨んだものの、出来上がったのは普段通りのドラマとなりましたと高橋は語って、会場の爆笑を誘いました。

 高橋の言うとおり、本編では良くも悪くもテレビシリーズのまんまであり、シリーズのファンなら違和感なく楽しめるでしょう。
 ただ映画化にするのであれば、もう少し大がかりな仕掛けがほしかったと思います。何せ、今回の敵の用心棒はチェ・ホンマン演じる大男チョウ。いくら筋肉ムキムキの無敵男でも、チョウと組むと全く歯が立たないのは当然。
 きっと観客は、『最後の劇場版』というタイトルに期待して、足を運ぶことになるでしょう。最初のコンタクトは、迫力ありましたが、最後はギャグでお茶を濁したのは残念です。もっと只野を徹底して追い込む展開はなかったかなぁと思います。このシリーズらしいところではありますがね。
 また敵にしても、バックに巨悪がありそうで、実は只野の社内部の勢力争いにとどめたのも残念です。その辺がドンデン返しにしても、インパクトを感じさせない要因ではないかと思います。
 テレビシリーズからのファンとしては、名物のお色気シーンなどお約束のシーンが少ないところもやや気になります。
 その中でも、舞台が大阪だっただけに、名物『只野の発射シーン』では、通天閣がモデルに。タワーが徐々に下から上へラストアップされていき、頂点に上り詰めたところで花火が打ち上げられて、お相手の女性が悶絶するという演出には、上映会場が爆笑に包まれました。

 画面いっぱいにモザイクにしたかった(モザイクの大きさには、只野のアレの大きさを表現している)という高橋ですが、こんなエッチな発想のすべてを高橋が編み出していることを監督から張らされて、照れまくりでした。

 まぁ、ギャグとアクション満載の作品ですが、赤井英和演ずる電王堂大阪支社の山西の登場で、人情ドラマの要素も加わりました。
 仕事に打ち込む余り、妻子に逃げられた山西からは、人生の哀愁がプンプンと漂います。只野がなぜそこまで打ち込むのかと聞くと。仕事はプライドのため。欲得とはちがうんやとしみじみ山西は語ります。
 『仕事はプライド』という一言は、只野の心を捉え、ラストの怒りの一撃につなげます。孤独な彼の心を心酔させた存在というのは、ほかにも先にも山西ぐらいだったでしょう。会社の汚れ仕事を一手に引き受けたたき上げてきた努力人山西を、赤井が好演しています。大根と呼ばれがちな赤井ですが、本作では素晴らしい演技でした。

 また今回は、電王堂の仕掛ける大型イベントのメインキャラとして、エビちゃんがほぼ本人役に近い人気モデル役として登場します。エビちゃんにもこんな裏面があるのかなというどっきり意味深台詞満載で面白かったです。

 シリーズを見ていなくても、すぐ作品の世界に馴染めますからご安心を。理屈抜きで笑って楽しめる作品ですから、肩の力を抜いて、ゆるりと見るのが正解でしょう。

流山の小地蔵