「いつか来るその日のために」おくりびと ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)
いつか来るその日のために
演出がもたつくせいで若干長く感じたり、「広末は何を演じても広末だなぁ」なんて、そのステレオタイプの演技にちょっと閉口したり、不満がないわけではない。でも、それを補って余りある魅力のある、丁寧に撮られた1本でした。「死」をテーマにしながらも、決して重過ぎず、むしろ軽い語り口で巧妙に語られている点も素直に胸に迫ります。と、いうことで08年を代表する1本になるだろうと思います。
役者陣では、本木扮する主人公が、その人柄にいつの間にか引き寄せられる社長を演じた山崎努が素晴らしい。また、吉行和子、笹野高史のコンビが非常にいい味を出してました。モックンも頑張っていたけど、大ベテランを前にすると、やっぱりちょっと霞んじゃったかな。(あと、この場を借りて峰岸徹さんに合掌)
それから「命」を象徴する食事のシーンがまた素晴らしい。人間は生きとし生けるものを自らの糧にすることでしか生きられないわけだけど、主人公達が美味しそうにフグの白子や干し柿、そしてフライドチキンにむしゃぶりつく姿は、食べることの喜びと食べ物への感謝がよく表現されていて、映画の魅力を格段にアップさせていると思う。
この映画を観ると、誰もが本作に登場する納棺師のような人たちに送ってもらいたいと思うのではないだろうか。いつか来るその日のために、誰もが観ておいた方がいい1本だと思う。
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