「イカ天司会者vs.クールスvs.ビジーフォー。」結婚しようよ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
イカ天司会者vs.クールスvs.ビジーフォー。
全編に吉田拓郎の曲ばかりが流れる、拓郎ファンのため、拓郎マニアのため、拓郎きちがいのための映画。おっ、ライブハウスは“マークII”というのか~などと感心していたら、30数年前のライブハウスは“マークI”だった。社会派作品が得意な佐々部清監督だけに真面目なホームドラマだったらどうしよう・・・などと心配していたのは全て杞憂に終わりました。もちろん笑えるのは40代以上の人かもしれませんが、モト冬樹で笑える方であれば問題ありません。
それでも違和感はありました。毎日夕食には家族4人が揃っていることが香取家のルール。一家の長である卓(三宅裕司)は誰かが欠けたりすると不機嫌になって怒り出すほどなのです。団塊の世代、しかも公務員の家庭に育ったこともあるし、勤め先の不動産会社では昇進も断るほどの徹底ぶり。かつてはフォークバンドを組んでいたこともある卓だったけど、夢破れて温かい家庭が生甲斐と変化したのだ。
実際、毎日夕方に帰宅できるサラリーマンなんて日本の社会じゃまれなこと。それこそ形式主義だとか権威主義という言葉がぴったり当てはまるほどの家父長制度の世界。その厳しいルールを貫くためには社会的人間としても犠牲にしなければならないことも多いように思いました。だけど、日曜日なんかにアフターサービスする卓。これも早く帰宅することの代償なのであろうか・・・
長女の結婚や次女のバンドがライブハウスで認められることになり、徐々にルールが崩れていく香取家。「お嬢さんをください」などと言われると、自分の王国を守るためにも断らなければならない。どこにでもある光景だ。かつてのバンドの相棒(岩城滉一)、下宿の後輩(モト冬樹)たちにも相談する卓だったけど、結局は娘の結婚を許す口実が欲しかったんでしょうね。
ガガガSPの路上演奏「落陽」ではついつい三宅裕司と一緒に口ずさんでしまいそうになったり、中ノ森BANDの「やさしい悪魔」ではキャンディーズの振り付けを思い出したり、音楽面では満足。途中までは平凡そうなホームドラマだったため、乗り切れなかったのですが、過去の「ゆうらく荘」や、娘の相手(金井勇太)のアパートのボロさに心が動いてしまいました(大学時代のアパートを思い出して・・・)。そして、やはりサプライズには目がうるうると。