劇場公開日 2008年9月13日

「パコと魔法の絵本」パコと魔法の絵本 rasenさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0パコと魔法の絵本

2008年9月19日

泣ける

笑える

楽しい

因業なじじいが無垢な少女と出会って生まれ変わる。要約すればそれだけのお話。スクルージのバリエーション。タイトルからして「パコと魔法の絵本」だし、「おくりびと」ならまだしも、忙しい大人を引き寄せる要素は皆無だ。実に残念だ。素晴らしい作品なのに。大人は観に行かないだろうな。でも、ポニョかわいいとか言ってる場合じゃないんだよ。断然パコなのだよ。

優しさなのか弱さなのか、どこか壊れた入院患者達。啖呵を切るのはスタイル抜群の看護婦さん。号泣するのは強面の男達。タフでなければジェントルにもなれぬという意見もあるが本当に優しいことが一番強い、というメッセージは傾聴に値する。

アメコミ風デザインのキャラをコスチュームプレイする役者達の、一見誰とは分からぬメイクとオーバーアクトがキッチュな背景とも良く調和している。それぞれのキャラが明確で、どの役者も思いっきり役を楽しんでいてとても楽しいし魅力的だ。クライマックスは実写とCGアニメをハイテンポなカットバックでつなぐという手間のかかる仕事振りで見せ場は最高に盛り上がり、パコを中心にした高揚感が安らぎと希望に満ちたエンディングへと美しく豊かな実を結ぶ。

派手派手しく洋風にお洒落っぽい作りだが、尻がむず痒くなるような恥ずかしさとは無縁の堂々たるファンタジー振り。日本でもこんな高水準の作品が出来ちゃったんだなぁ。ディズニーにもティム・バートンにも遜色ないどころか凌駕する勢いに胸をうたれる。下妻、松子、パコと観たことのない世界を拓き続ける中島哲也!凄い!。チャレンジングなクリーエーター魂が炸裂した本年屈指の傑作なのである。ゲロゲーロ!

rasen