「"良い着陸とは"」ハッピーフライト 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
"良い着陸とは"
1機のジャンボジェット機と、空港業務に携わる人達の群像劇ですが、よくぞここまで纏め挙げたものだと感心した。
どれ程の職員達がそれぞれの役割を果たす事で、数多くの業務を潤滑油の如く滑らかに機能して行くのかを詳しく教えてくれる。
まだまだ新人のCA綾瀬はるか。中堅だけど何も良い事が無く、辞める決意の受付業務員田畑智子。昇格試験中の副操縦士田辺誠一。最新式のPCに強い肘井美佳と、アナログ人間の岸部一徳。その他整備員達にバードさん。東京タワー詰めと、羽田飛行場の管制官達の違いと役割や、その他多数の職員達。
これに、それぞれの飛行機オタク達が絡まり会い、あわや大惨事と成りかねない事態を乗り切ろうと奮闘する。
それぞれに努力する姿は、全てに於いて一つの方向を全員が向いて業務に当たっているからに他ならない。
作品中に“それ”をはっきりと明言するのは、直接お客と接する業務の者だけだ。だからと言って、だれも自分本意の仕事等していない。
全てが“お客様第一”との考えで仕事に付いているのだ。
作品の中でその想いを代表して、寺島しのぶ演じるチーフの毅然とした姿が全てだと思える。
どんなに上手く行かずに「こんな筈じゃなかった…」と思っていた者でも、いつの日かスキルは上がり、やがては新人職員から頼りにされ手本となって行くのだ。
ただ、ジェット機の運行業務に当たる人達の仕事振りに大半を割いた群像劇である為に、乗客のドラマはクレーム男に笹野高史。高所恐怖症の新婚妻と夫。それとCAに憧れる女子高生のほぼ4組に絞られる。
現役のCAさんから見たら「本当はもっと戦場なんだよ〜」等の意見は出そうですけどね。
それと正露丸が転がってしまう前後の場面では、臭いに関するセリフのやり取りがあっただけに、正露丸の強烈な臭いで乗客がパニックに陥ってしまうのか?と、一瞬思っただけにちょっとだけ拍子抜けはしましたが…。最低限あの新婚さんだけでもその後のワンカットは欲しかった感じかな。
だからと言って、この作品が面白い事には間違いが無いのですが。
題名に《ハッピー》と入っているのに、作品中に描かれる事柄にはハッピーの欠片も無い。
職業病云々と話す場面等は本来悲しいまでの場面でありながらも、まるで詰め将棋を指している様に描かれて笑いに代えているのを見ても、映画を観終わってこれほどまでに《ハッピー》な気分にさせられてしまう。それって何て素晴らしいのだろう。
だからこそ、思わずラストに流れるシナトラの歌声では、不覚にも涙がこぼれてしまった。
「良い着陸とは何か」
それは乗客を安全に送り届ける事に他ならないのだ。
「いいとも」出演の際に撮影秘話として、転ぶ場面で鎖骨を骨折したと語っていた田畑智子お疲れ様でした。
「めざましテレビ」で紹介されていた、どうしても作品中に入らなかったと言う飛行機の墓場映像が何とも勿体無い。
ひょっとしてDVDの特典映像で見られるのだろうか?、まだまだ入れ切れなかったエピソードも多そうな事だし、それらの映像を加えて改めてディレクターズカット版で公開する…なんてどうだろうか。
(o^-')b(o^-')b(o^-')b
(2008年11月15日 日劇2)