「宮崎駿だからこそ許される作品だが、見応えがないわけではない」崖の上のポニョ ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎駿だからこそ許される作品だが、見応えがないわけではない
巨匠・宮崎駿の4年ぶりの新作は、宮崎自身が子供のために作ったと断言する“宮崎版「人魚姫」”。思えば、ここ最近の宮崎アニメは、シリアス路線が多く、どちらかと言えば、大人向けの作品が多かった気がするが、本作は宮崎の言葉どおり子供たちに向けたど真ん中のストレートのような作品だと思う。
では、肝心の作品の出来はどうだろう? 結論から言うと、これまで多大な功績がある宮崎だからこそ許される作品ではないだろうか。中盤以降、明らかにテンションが落ち、尻すぼみになってしまう感じが何とももったいないし、あのラストは、「○○は幸せに暮らしましたとさ。おしまい」で終わる絵本のようで、呆気に取られる観客も多いだろう。また、おそらく宮崎アニメにファンが求めるようなストーリーの魅力が欠けているのが残念。ということで、「ルパン三世/カリオストロの城」や「天空の城のラピュタ」のレベルの興奮は求めないように。
ただ、だからと言って酷い出来の作品かと言うと酷評するほどではないとも思う。何より画が力強い。中でもCGを使わずに、筆書きのタッチで水の表現にこだわったという嵐のシーンの迫力は必見ものだし、荒れ狂う大海原の上をポニョが元気に駆け回るシーンの爽快感と興奮は「さすが、宮崎!」とうならざるを得ない。振り返ってみれば、ごくごく単純なストーリーも、言い換えればシンプルだけど濃縮されたストーリーと言えるかもしれない。そんなわけで、なんだかんだ言って、そこそこ楽しめた。
それから、映画の製作に携わった全ての人への感謝と敬意が感じられるエンドロールは感動的だった。多分、あんなエンドロールは初めてでは? まあ、これは映画の出来とは関係ないのだけれども。。