「ポニョポニョのプニョプニョがウジャウジャ!モヤモヤしてクルクルしてポニャポニャになりました🧠👼」崖の上のポニョ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ポニョポニョのプニョプニョがウジャウジャ!モヤモヤしてクルクルしてポニャポニャになりました🧠👼
人面魚のポニョと、5歳の少年である宗介との出会いにより引き起こされる大騒動を描いたファンタジー…というかホラー・アニメ。
監督/原作/脚本を担当したのは『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』で知られるアニメ界のレジェンド、宮崎駿。
ポニョの母親、グランマンマーレの声を演じたのは『世界の中心で、愛をさけぶ』『ザ・マジックアワー』の元タカラジェンヌ、天海祐希。
第32回 日本アカデミー賞において、最優秀アニメーション作品賞を受賞!
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なんやこれ一体?
恐ろしい手間暇をかけた、巨匠渾身のポルノ映画。
幼女や幼児、果ては老婆の顔面にまで液体を吹きかける、フェティシズムの塊。
そして、海から破滅を呼び寄せる押しかけ女房が襲来すると言うホラー映画。怖えーよ…😰
異常なまでの幼児愛と老婆愛がメーターをぶち破って噴出した、フェティシズムのカンブリア爆発💥
『千と千尋の神隠し』から顕著になった、物語の整合性を無視する、というか放棄する作劇方法はこの『ポニョ』で頂点に達した。
世界広しといえども、ここまで製作費を費やし、そして広く大衆に受け入れられたコンテンポラリー・アートは存在しないだろうし、今後も存在しないだろう。
作画的には見所はある。というか、見所しかない。徹底的に手書きに拘った作画は狂気性すら帯びている。
総作画枚数17万枚以上…。頭おかしいのと違うか?
レジェンドアニメーター、田中敦子さんが手がけたというクラゲがぷかぷかする海中シーン、ここ1カットで1600枚描いているらしい。怖えーよ…😰
これまでの宮崎作品に用いられてきた、まるで実在しているかのようなリアリティのある美術を今回は封印。
宮崎駿が姉と慕う絵本作家のレジェンド、中川李枝子さんの作品のような、ほんわかした世界観が描き出されている。
『崖の上のいやいやえん』というタイトル案も出ていたらしいし、完全に中川李枝子リスペクトの作品なのは間違い無い。
作品の舞台となる保育園「ひまわり園」と、それに隣接している老人ホーム「ひまわりの園」。
生の象徴たる幼児と死の象徴たる老人が隣合わせに存在しているという建築物は、そのまま本作のテーマを表しているようで意味深であるが、「虫眼とアニ眼」という宮崎駿×養老孟司の対談本に宮崎駿の理想とする街のイラストが載っている。
そこには「町のいちばんいい所に子供達のための保育園を!」「保育園と地つづきでホスピスを!」とある。「オレこういうとこで死にたい」とも記述されており、本作の舞台はまんま宮崎駿の願望がダダ漏れになった結果の産物であることがわかる。深い仕掛けとかは多分無い。
ちなみに、本当はもっと保育園が舞台になるはずだったが、制作の途中で本物の保育園をスタジオの隣に作っちゃったから、映画中で描くことへの興味を失ってしまったらしい。だから前半でしか「ひまわり園」は登場しないわけです。この辺りのエピソードからも、いかに本作が無茶苦茶な作られ方をしているかがわかる。
ポニョの本名がブリュンヒルデ、つまり戦死者を天界へと導く半神ヴァルキュリア、であることからもわかるように、本作が「死」の物語であることは明白。
新たなる生命の誕生には旧来の生命の死が必要不可欠であるという、『風の谷のナウシカ』の原作に顕著な宮崎駿的哲学が全開。
『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』を観た人なら、やっていること一緒やんけ!と思うだろう。
まぁ実際一緒なんだけど、単純に子供を楽しませるためのギミックであった洪水を、本作では滅びと誕生のメタファーとして描いている所は興味深い。
あれだけの洪水であれば、当然死者が沢山出ている筈だが、住民はみんな呑気にしている。
これを『パンダコパンダ』的な牧歌性の表れとみるには、本作で描かれている世界は不穏すぎる。
現世が生と死の入り混じった世界へと変貌してしまったからこそ、死という概念が存在しない牧歌的な世界が舞台であるように見えるという、暗喩的な構造を持っているのが『ポニョ』という映画内世界なのだと思う。
で、説明が無いのに何故か印象的なトンネル・シーン。このトンネルを抜けた先は明確な「死」の世界。
だからポニョはトンネルを抜けるのを怖がったわけだが、このトンネルを抜けて神であるグランマンマーレから認められることにより、生と死のカオスとなった世界を元通りに修復する、というのが『ポニョ』の物語。
こう書くと壮大な神話が展開しているのだが、そういうことを全く説明していないんだよ〜😅
もうこれは普通の物語を描くことに飽きてしまった老人の暴走に他ならないわけで、おいおい大丈夫かよジブリ、しっかりしてくれ。と公開当時に『ポニョ』を観たファンは思ったことだろう。
次回作『風立ちぬ』でも相変わらず暴走している宮崎駿翁だが、ポニョ的な全ての説明を放棄してアヘアヘする、という方向ではなくなったのは素直に嬉しい。
我々宮崎駿ファンは新作『君たちはどう生きるか(仮)』の公開を首を長くして待っているわけだが、散々待ってまた『ポニョ』みたいな映画を観させられたら…最悪だな😅
何気に嬉しかったのはエンドロール。
役職を無視して五十音順にスタッフを並べるという独特なスタッフロールだが、その中に千尋の声優だった柊瑠美さんの名前が。赤ちゃん抱いていたお母さん役ですね。
スタッフの名前の横にそれぞれイラストが描かれているのだが、柊さんの名前の横には千尋とカオナシが描かれている。
こういう何気ないファンサービスって素敵よね。
※ジブリ作品の北米版声優は異常なまでに豪華。本作もご多分に漏れない。
グランマンマーレをケイト・ブランシェット、宗介の父耕一をマット・デイモン、魔法使いフジモトをリーアム・ニーソン。
ハリウッド第一級のスターに、こんなわけわからない作品の吹き替えをさせてしまって、なんとなく忍びない気持ちになってしまう…😅