「演出過剰」映画 クロサギ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
演出過剰
総合:60点
ストーリー: 70
キャスト: 65
演出: 45
ビジュアル: 70
音楽: 55
人気漫画を基にした映画。原作と大きく異なるのは、視聴者に訴える見せる演出があちこちにあること。しかし残念ながらそれがあまり上手ではなくわざとらしくて鼻につく。
わざわざ劇中にさらにシーザーの劇の科白をもってきたり、嵐の中で日本刀をつきつけそこに都合のいいタイミングで雷がなったり、落ち込んだ主人公が雨の中を傘もささずに歩いて人にぶつかって倒れたり、いい大人がメリーゴーラウンドに乗って仕事の話をしたり。全体的に情景をあまりにわざとらしくべたべたに演出しすぎで、逆にそれら一つ一つが安っぽく見えて白けてしまう。何か一昔前の子供っぽい映画を見ているよう。そんなことしなくてももっと普通に描写が出来るのではないか、もしそれが出来ないのならば監督の力不足ではないのか。
また最後の場面で、詐欺が終わった山下演じる黒崎がわざわざ被害者の竹中演じる石垣とオセロしながら残り、詐欺の全貌を親切に解説するのは駄目。詐欺師は詐欺の後いかにうまく逃げるかが重要である。もし騙した後に二人きりで一緒にいたりすれば、騙された被害者に逆上され命を失う危険すらある。あるいは正体がばれればその後また復讐されるかもしれない。それなのにわざわざ自分があなたをはめたのですと教えたうえに、その手口まで解説してやるなど普通あり得ないでしょう。
もちろんこれは本当は竹中にではなく映画の視聴者に解説しているのだが、それにしてもあまりにも不自然な場面である。こんなことを平気でしてしまうのは脚本家の力量不足。このあたりは視聴者すら見事に騙した詐欺映画の名作「スティング」と比較にすらならない。
ただし詐欺を扱った物語は悪くありませんでした。でもこれは映画の力というよりも、原作の力というべきでしょう。わざとらしい演出をやめてもっと普通に映画を撮影していればもっと素直に楽しめたと思うと少し残念でした。