劇場公開日 2008年6月14日

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「変わった女の子と変わった家族」JUNO ジュノ Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5変わった女の子と変わった家族

2016年2月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

難しい

幸せ

【ストーリー】
16歳の女子高生ジュノは、パンクロックとB級スピラッター映画をこよなく愛す、大人顔負けの毒舌とsarchasmの申し子。
ある日、馴染みのコンビニで馴染みの店員に囃し立てられながら3本の検査薬を使い切った末、ついに直視せざるをえなくなった「妊娠」というキッツイ現実に一瞬怯んだものの、持ち前の打たれ強さをフルに発揮して、生まれてくる赤ちゃんのために完璧な両親を見つけるべく即座に行動開始する。
ジュノが新聞広告の養子縁組希望者欄で見つけたローリング夫妻は、ベビールーム有の大豪邸に住む裕福な美男美女、と文句なしのお相手。一安心を通り越して大喜びのジュノだったけれど、予定日が近くなるにつれて夫妻の様子に異変が。有名なCMソングも手がけた商業作曲家の夫は、実は今でもカート・コバーンのようなロック歌手になることを夢見ている少年メンタル。妻は、どうしても子供が欲しいあまり夫の希望を完全シカトで「完璧な父親」を押し付ける、完璧主義のいっぱいいっぱいレディだった。
果たして養子縁組は無事成立するのか?
ポップな音楽とシリアスになり過ぎない演出で、運命の10ヶ月間を軽快に描く。

ジュノ、ほんと変わってる!笑
妊娠が発覚して、交際相手(ジュノは付き合ってなくて親友だと思ってた)のポーリーに報告するときも、朝一番にポーリーの家の前にでっかい肘掛け椅子を持って行って、わざわざパイプを吸うという演出を交えながら「おはよう!妊娠したよ!」。
ジュノがそんななら両親もまた変わってて、妊娠の報告を受けてもしばらくの間言葉を失っただけで、「養子に出す、もう相手も見つけてある」とジュノに言われても、その後ポーリーに会ったときも、特に怒らない。ってかこれって別に変わってない?予想外の妊娠が発覚したら咄嗟に「やべえ親に怒られる」って考えそうだけど、これってすごい日本的なのかな。国じゃなくて単に家庭環境?
男の子の親だったら「相手の女の子の人生を無責任に台無しにして!」とかそういう発想かな。でも双方が学校なり家庭なりで性教育を受けていて、さらに合意の上であればもう完全に2人の自己責任になるわけで、そうなった場合、怒る親は何に対して怒っているんだろう。窃盗で補導されたとかカンニングで退学になったとかそういうのは怒られて然るべき事件だけど、そもそも「予期せぬ妊娠」って怒られるべきもの?あるいは「怒ったところでどうにかなる問題でもないから怒らなくていい」っていう問題でもない、のか。

ジュノとポーリーは妊娠中も相変わらず学校で会ってるし(ポーリーのママはジュノのことが嫌いだから快くは思ってない)、出産後もポーリーがすぐ病院に駆けつけて、ベッドに横たわるジュノを抱きしめる。しかもそれまで付き添ってたパパは「後はよろしく」って感じで無言でポーリーの肩を叩いて去る。このへん、映画とはいえ「え、こんなもん?」っていう不思議な感覚だった。
たぶんそれには同じく未成年の妊娠と出産をテーマにした邦画「コドモのコドモ」を観た影響がある。今回の「ジュノ」が、日本で同じ年に公開されたのは何か縁があるのか?オマージュか?と思ったけどそれは特に関係なかった。
「コドモのコドモ」では、小学生が妊娠する。が、あまりに予想外すぎて中絶ができなくなる頃まで大人は誰も信じてくれない。発覚後、女の子側の家族はやっぱりここでも怒るんではなくて、驚いたあとに受け入れるんだけど、小さい村だってのもあって男の子側の家族が逃げるように引っ越してしまう。こういうところに「未成年の妊娠=恥ずべきこと」っていう感覚が残っていることを表しているような気がした。うーん、果たしてそうなのかなぁ。わかんなくなってきた。

アメリカでは「自己責任」っていう思想が日本より強く根付いているからなのかな。ジュノの両親は、高校生の娘を「自分たちの子供」っていうなんとなく所有感を帯びた存在としてじゃなくて、一人の自立した人間として捉えているように見えた。その上で、今回の妊娠から出産までの過程(及びその後の人生)でジュノが傷付いたり苦しんだり、あるいは喜びや愛を感じたりするという一連の流れを全部まとめて本人に引き受けさせる。責任を持たせる。そして自分たちは親として彼女の意思を尊重し、意見の相違もあるけれども基本的には全力で支える。

「親には親の人生があって100%子供のために生きるわけじゃない。それでいいじゃないの」っていう欧米の考え方は、素直にいいなぁと思う。日本は「母親」に多くを求めすぎ。今まで完璧に生きてきたわけじゃないし完璧になろうと思ったこともないのに子供産んだ瞬間完璧になれるわけないじゃん。逆に産まれる前以上にいっぱいいっぱいになって自分の理想論とか粉々になって言われなくても既に苦しんでますから。家族でもない外部から事情も知らず理想論を押し付けてくる人たち多いけどあなた方はどれだけ素晴らしい生き方をされてきたんですか?自分の人生にどんだけ自信あるんですか?って感じ。ゼエゼエ。

もし将来自分の息子が...っていうのは今考えても実際にそうなってもきっとわかんないから考えるのはやめた(笑)でもこの映画でジュノのパパとママが相当なグッジョブだったことは覚えておこうと思う。

Chisa