「議員が主役のCIA秘密作戦」チャーリー・ウィルソンズ・ウォー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
議員が主役のCIA秘密作戦
アフガン侵攻ソ連軍へのCIA秘密作戦とくれば敏腕エージェントが主役となるはずだが俗っぽい政治家の活躍が描かれる、もっとも実話となるとCIAでは無理なのでしょう、したがってど派手なアクションやサスペンス映画ではありません。
CBSニュースのジョージ・クライルのノンフィクション小説の映画化、劇中でも主人公のチャーリー・ウィルソンズ議員がアフガンに関心を持つきっかけがCBSのダン・ラザーの報道番組でした。実話と言っても映画となると脚色はあるから鵜呑みにはできないが同じテキサス州出身の下院議員だったマーティン・フロスト氏によればは実物はもっと華美な人物だったが映画の内容はほぼ真実と語っている。たしかに好色でアル中、時々コカインではトムハンクスが演じていなければうさん臭くて信じられなかっただろう。いかにCIAの秘密作戦とは言え大統領が知らないはずはないと思うが映画ではチャーリー・ウィルソンズの独断のように描かれる。もっとも後のタリバンのテロに通じたとなると関与はタブーなのだろう。アフガン侵攻についてはソ連内部でも貧しい経済、不安定な政府、敵対心の強い国民性から介入しても得るものは無いとしていたが反共運動が中央アジアに及ぶと懸念したアンドレイグロミコ外相、ユーリ・アンドロポフKGB会長、ドミトリー・ウスティノフ国防大臣らのトロイカ政権が押し切ったとされている、アメリカはモスクワ五輪のボイコットなど非難はするが介入はせずソ連の消耗を静観するスタンスだった、いみじくも「ランボー怒りのアフガン」でもトラウトマン大佐が「愛国心をもったゲリラがいる国は征服できない、我々はそれをベトナムで体験した」といっている。
玩具に似せた爆弾などソ連の非道さは目に余るし立ち上がったチャーリー・ウィルソンズ議員も偉いのだが支援したゲリラも内部抗争の果てにアメリカに牙をむける現実、アフガンの支援に尽くした中村医師の殺害を知る身としては狂信的な暴徒には誠意が通じないのかといたたまらない気にさせられる。それもこれも人間不信を植え付けた大国の覇権主義の歴史のつけなのだろうか。映画だけを見れば奇妙なヒューマンドキュメントなのだが俯瞰してみると病巣の深さに気が沈む。