「ブラビの超絶演技と饒舌な駄作の同居する作品」ジェシー・ジェームズの暗殺 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ブラビの超絶演技と饒舌な駄作の同居する作品
日本で初の試写会で、おまけにアカデミー主演男優賞、アカデミー助演男優賞の有力作品をいち早く見れることに満足感はあったものの、監督の力量の足りなさにより2時間44分という饒舌な作品と付き合わされた苦痛、その反面神かがりの領域に達している主演ブラビとケイシー・アフレックのオーシャンズシリーズコンビの素晴らしい演技にどうこの作品を評価すべきかとまどいつつ帰路に就きました。
オーシャンズでのお気軽な二人の演技と比べて、この作品では当時のカリスマ的なアウトローとそれを暗殺した信奉者の青年になりきっています。
作品の主人公は、アメリカの西部開拓時代にウッディ・ガスリーによりロビンフッドと比較され、伝説と化したジェシー・ジェームズ。彼は銀行や列車強盗を繰り返す犯罪者集団を結成していました。彼には10,000ドルの懸賞金がかけられ、最終的には仲間のロバート・フォード(ボブ・フォード)に銃で頭を打ち抜かれて暗殺されてしまいます。
ロバートが強盗集団に入ってからの、ジェシーとロバートに焦点を当てたのが本作です。冒頭の列車強盗シーン以外は派手な撃ち合いもなく、ジェシーの疑心暗鬼とジェシーを慕いつつも裏切ることになるロバートの愛憎のこもった心理ドラマがこの作品のコアになっています。
後半のふたりの駆け引きの緊張感、特に暗殺当日の実行に至るまでのプロセスがほどよい間で描かれて、その間ドキドキのしっぱなしでした(^^ゞ
この作品のプロデュースもしているブラビの入れ込みようは凄まじいものがあり、画面で見ても、ブラビというよりもジェシー・ジェームズそのものがスクリーンに映っていると錯覚するぐらい、なりきりモードでした。顔つきも違っていましたね。
人に睨みときのものすごい殺気を感じましたよ。
けれども、この作品の中では寧ろ、ロバート・フォード役のケイシー・アフレックの方が演技的にはうまかったような気がします。当初は誰よりも、ジェシーに憧れていた20歳のミーハーな若者であったし、すごく臆病者だったのです。そんなヤツが自分のヒーローに向けて引き金を引くまでの心境の変化を巧みに演じています。
ロバートは、単なる臆病者というよりも、羊の皮を被った狼だったのです。その野心はジェシーの内面の狂気に触れるなかで、このヒーローを殺して自分が名声を得ようと考えるわけです。
ケイシーの演技は、軽薄な話はものから次第にクールで計算高いクレバーなロバートをに変わっていく様をよく表していました。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』は、落ち着いたストーリーで悪くはありません。
但し物語が佳境の暗殺シーン至るまでが、だらだらとながたっらしいのです。監督の経験不足による編集ミスだと思います。とにかくテンポが悪く、全体的なストーリーの流れが、エンターテイメント性には欠ける作品でした。
最後も、ジェシーの暗殺後の顛末を長々と続けて、誰が主役が曖昧な終わり方になりました。それに劇中随所にストーリーテーラーに語らせて、物語を補足している点も、監督の自信のなさを感じさせています>
ところで劇中ジェシーは、ほとんど黒を身に纏っていました。
彼がわずかな光が当たる闇の中にいると、今月公開される「レンブラントの夜警」の様に黒が印象的に映ります。その分冒頭の金色の麦畑で沈みゆく太陽を見つめたりするシーンが絵の様に綺麗でした。けれども結局闇と黒に彩られた彼の人生のなかで、光が差すことはなかったようです。
さらに、どうも自分が身内の裏切りにより殺される運命と悟っていたようで、どこか切なさを感じさせる表情をしていて哀愁を漂わせます。最後まで彼はロバートのことを信じたかったことでしょう。ブラッド・ピットは、そんな刹那の表情の似合う俳優でした。
さあて、2時間44分の苦痛に耐えてでも、あなた様は究極むの名演技を観ますかねぇ~。どっち?(別な監督なら、もっと傑作になったでしょう。)