劇場公開日 2009年3月13日

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「原作者の意見を言う余地は無かったのか」DRAGONBALL EVOLUTION ニワトリさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5原作者の意見を言う余地は無かったのか

2009年3月14日

単純

この映画決して「ドラゴンボール」ではない。
これから観ようという無謀な試みをする人は覚悟してもらいたい。
ストーリーも適当なら展開もオザナリ。カンフーアクションはそれなりの面白みもあったが、ギャグはとことんスベるし(チョウ・ユンファはよくもまぁこんな役柄、演出を引き受けたものだ)、悟空、チチ、ブルマ、ヤムチャのロマンスなんぞドン引きだ。
それにCG等の特殊効果が全体的にひどい仕上がりで、クライマックスの遺跡出現シーンや神龍の造形などは目も当てられない。

周知の事実であるが、アメリカ原産の「アメコミ・ヒーロー」や「グラフィック・ノベル」を元にした映画は大変なヒットを飛ばすにも関わらず、日本原産の「漫画」を元にした映画に成功した例はみない。
原産国である日本にしてみれば、こんな悔しい事態は無い。

思うに、これは日米の「漫画」に対する価値観の温度差にあると思う。
日本の「漫画」は、欧米ではどちらかと言えば後発組だ。
日本の「漫画文化」は、それが知られるようになったのは先に「ジャパニメーション(日本のアニメーション)」が広く世に知れ渡ったからだ。

逆に「アメコミ」のように、すでに書店や専門店で紙をベースに子供の頃から親しまれたアメコミヒーローたちには、制作側も大変な愛着と敬意がこもっている。
「この映画を作りたい!」という熱意が、映画からも感じられるのだ。

しかし日本の「漫画」は別。

今やハリウッドのネタ不足は末期状態。とりあえずヒットしそうな作品の映画化の権利だけは取っておくものの、いざ制作という段階になって急にトーンダウンしてしまう。
そんな状況でまともな作品が作れる訳がないのだ。

それらの背景を差し置いても、この映画はひどい。
B級レベル以下で、バカ映画を好む人たちからの支持すら受けられる要素もない。どうせならドスケベ亀仙人がブルマにパフパフしてもらうオバカ描写でも入れた方がまだ良かったかもなどと思ってしまうぐらいだ。

鳥山明氏は原作者であり、この映画も製作総指揮に名前が挙がっているが、想像するに意見など言える状況になかったものと思われる。
この企画にOKを出したことを心底後悔しているに違いない。

そもそも3部作を想定して作られたらしいが、この出来映えで続きを作るなんてことになったら20世紀FOXはツブれてしまう。
私がFOXの幹部だったら、とっととDVD化してTV放映もさっさと済ませてある程度お金を稼いだら(それでも大赤字だろうが)、こんな映画のことなんぞ忘れてしまいたいと思うに違いない。

ニワトリ