劇場公開日 2010年4月10日

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「斬新!! 私ならアカデミー賞作品賞、絶対こっちに一票」第9地区 めぐ吉さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0斬新!! 私ならアカデミー賞作品賞、絶対こっちに一票

2010年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

斬新!!!!
とにかくその一言につきます。
本作もアカデミー賞作品賞にもノミネートされていましたが、
私なら『ハートロッカー』よりも絶対こっちに一票です。

正直に言うと、観る前は
「『スターシップ・トゥルーパーズ』みたいな確信犯B級映画だろう」
くらいにしか
思っていなかったのですが、いやいやこれが。

B級テイストはしっかりかもしつつ、
それを小難しくならないためのスパイス(ユーモア)として活かし、
実はエイリアンに託して、人間の心に潜む差別意識や、
そんな“違い”を超えた信頼やつながりを描いています。

しかも、これまで「エイリアンとの交流」モノといえば、
エイリアンはかならず、ETに代表されるような
愛くるしいルックスでしたが、
今作のエイリアンはとにかくキモチ悪い
そしてそんなルックスを、人間たちは忌み嫌って「エビ」とバカにし、
南アフリカの隔離地区に居住させています。

しかし、そんな不気味なルックスの「エビ」たちが
なんともリアルに人間くさい
(って言い方も「人間」を基準にした差別??)のです。
好物の猫缶をこっそり盗んだり、飲んだくれてやさぐれてたり、、、

でもそんな中で、エビのウィルスに感染してしまった主人公を
はからずもかくまうことになったクリストファー・ジョンソン
(この名前も、白人化した(させられた)黒人に
ありがちな名前っぽくて皮肉ですね、、、)
というエイリアンが、そんなルックスでありつつも、
だんだんと知的にソフィスティケイトされて見えるから、不思議。
そう、ラストには完全に、このクリストファーと息子に
感情移入して涙してしまいます。

難しいテーマを、いかにも真面目くさって描くのではなく、
偽悪的なほど、エンターテインメントに徹して描くこの“慎み深さ”、
私はものすごーーく好きです。

めぐ吉