「もうひとひねり欲しかった」第9地区 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
もうひとひねり欲しかった
拙ブログより抜粋で。
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この映画が良質なSFであることは、つまらないうんちくを一切排除し、わからないことはわからないと割り切って観客の想像にゆだねていることからも伺える。
それでいて、「宇宙人の難民化」という一発ネタといっていいこのアイデアを、差別問題を扱った社会派映画にまで昇華させた煮つめも怠らない。
ヴィカスはヒーローではない。ありきたりの小市民だ。
人間の醜さも内包した平凡さが、より差別問題の根深さを浮かび上がらせる。
とは言うものの、そんな小難しい映画ではなく、あくまでエンターテイメントに徹したバランス感覚も素晴らしい。
社会的な裏付けがあっての、SF的お遊び映画。お遊びっていうのは、むろんいい意味で。
そんなわけで、エイリアン相手に差別する側のヴィカスが被差別側に転じる中盤まではワクワクさせられた。
もちろん、映画の中での差別的な行いは観ていて楽しいもんではないのだが、次はどんなアイデアを見せてくれるんだろうという映画的、SF的期待感に胸が高鳴るのだ。
しかし、その期待は終盤に向けて落胆に変わる。
普通のSFアクションとしてはなかなか見応えのあるクライマックスなんだが、前半の才知に満ちたセンス・オブ・ワンダーに比べると、少々平凡な落としどころという感が否めない。
ただ、唯一その終盤で巧いと感じたのは、最終的な結末を、やはり観客の想像にゆだねて終わったこと。
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