「まさかの宇宙人びいき」第9地区 プライアさんの映画レビュー(感想・評価)
まさかの宇宙人びいき
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ある時UFOがやって来て、地球上空で立ち往生する。
人間が行って突入し、そこで海老みたいな多くの宇宙人と遭遇する。
宇宙人達が攻撃的でなかった事もあり、平和的に保護する形となった。
そして第九地区という地域に住まわせた。海老たちは地球語を話せた。
こうした共存の中、一部の人間は宇宙人の持つ武器に目をつけていた。
政府だか企業だか忘れたが、抜擢された主人公が第九地区を訪れる。
20年以上経ち、海老の数が増え過ぎたので、移住を依頼するためだった。
その時主人公は、海老たちが隠し持っていた謎の黒い液体を見つける。
何かと思っていじっていると体にかかり、手が宇宙人のそれになった。
上述のように一部の人間は宇宙人の強力な武器に興味を持っていたのだが、
DNAの関係で彼らにしか使えないということがわかっていた。
が、今の主人公は人間と海老のDNAの中間の形になっている。ってことは・・・
政府だか会社だか知らんけど、強制的に主人公を監禁して研究対象とした。
主人公の命などどうでも良かった。まさしく人体実験である。
何とか逃げ出した主人公だが指名手配され、行くところもなく海老のもとへ。
そしてそこで、海老たちが密かに帰還計画を立てていたことを知る。
また黒い液体があれば主人公の手も戻るし、海老たちも帰還できる事も知る。
そこで1人の海老と共に人間の研究所に忍び込み、奪還に成功。
第九地区には軍が乗り込んで来たが、海老兵器を使える主人公が迎え撃った。
そして仲間の海老を救い、宇宙船へと送り出した。
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とにかく海老は善良。平和的で義理堅く、無欲。徳が高い。
対照的に、人間の愚かさがクローズアップされまくってる映画。
表向きは保護しながらも、裏ではその武器を奪おうとする汚らしさ。
名目上は共存でも、相手が抵抗しないとわかるとすぐに増長する愚かさ。
でもそれが人間であり、もしこれが現実でもこんな感じになりそう。
権力を持った人間というものは、自分より弱いと思った者を支配したがる。
地球上では動植物がその対象だし、一般市民だって権力者に支配されている。
主人公は急に権力を持ち増長した、支配したがる存在の象徴として描かれる。
人間の醜い部分を全て演じ切る役と思っても良いと思う。
主人公は最初は海老に対して完全に上から目線の態度だった。
だが梯子を外されて危機に陥ると、一転して海老を頼る。
それを許容する海老、という構図。
主人公は海老と協力関係になった中でも裏切るようなマネをするし、
海老がいよいよ殺されそうになった段階でも一度は見捨てる有様。
その後ようやく思い直して助けたんやが、これもある程度打算的。
だって海老の圧倒的な装備を身につけた、ある程度安全な状態での話やもん。
それだけの装備がありながら一度は見捨てるって事の方が身勝手過ぎ。
最後はよくわからない終わり方をした。
海老らは一部が帰還しただけで残りは地球に残って繁殖した。何故?
続編への布石なのか?
宇宙人ものは多く見て来たが、大体は地球を侵略して来るのに、
この映画では地球人側が一方的に悪として描かれてた。
宇宙人側に味方しながら見る作品は始めてやし、新鮮だった。
人間の身勝手さに対する警鐘を鳴らす作品である。
改めて自分のあり方を見つめなおすべきだと思った。