劇場公開日 2010年4月10日

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「21世紀の初めに作られなくてはならなかった必然的な作品だ」第9地区 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.021世紀の初めに作られなくてはならなかった必然的な作品だ

2019年1月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

衝撃的だ、これこそ本当のSF映画だ
宇宙船や光線銃のビームぎ飛び交うものだけがSFではない
本当のSFとは、思考の枠を押し広げ、硬直して固定化されてしまった私達の観念を相対化してくれるものだ
それがSFの役割であり、本作は見事にそれを果たしている

舞台は南アフリカのヨハネスブルグ
それだけでなにを言おうとしているかは明らかだ
アパルトヘイトへの憤り、その目をおおう実相をエイリアンと人間いう極端な誇張で意味を相対化して映画にしたというものだ

しかしそれが本当の製作目標ではない
その世界観を如何にリアルに作り上げるかに監督の情熱が注がれている
それは観れば直ぐ分かることだ
つまり本作は本当は政治的意図を持って作られてはいないし、アパルトヘイト云々は若干の批判は在りつつも、結局は設定の為の建前に過ぎない
だから本当はそこで終わったはずの映画だった

しかし本作は僅か10年も経ずして、作った時点の製作者の意図とはお構い無しに、思いもしない大きな政治的意義を持ってしまった
それは欧州における移民問題だ

正に本作の世界そのものが現実に起こったのだ

アパルトヘイトに憤り、常に人道的にあるべき
ナショナリズムよりグローバルな自由平和平等博愛が優越するのだ、それが文明なのだ
そのような美しい理想を掲げて、EUの諸国は恐ろしい程の大量の移民を受け入れたのだ

しかし夢はもろくも破れた
そんなものは偽善だったのだ
本当に自分たちの領域にエイリアンが大きな構成を占めた時、既存の社会とエイリアンの社会は併存、共存など出来ないという現実がはっきりしてしまったのだ
ならばどうするのか?
答えはない

第9地区は現実に存在してしまい、永遠に続くのだ

本作はその見たくない考えたくない厳しい現実を先取りしていたのだ
21世紀の初めに作られなくてはならなかった必然的な作品だ

日本人にとっても本作は他人事ではない
人口減に直面して外国人労働者を大量に入れる方向に日本も舵をきった
東京に第9地区が出現するかもしれないのだ

あき240