サブウェイ123 激突 : 映画評論・批評
2009年9月1日更新
2009年9月4日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
スピーディな演出が冴える骨太でスタイリッシュなスリラー
「突破口」「笑う警官/マシンガン・パニック」と並んで大好きなウォルター・マッソー主演作「サブウェイ・パニック」(74)のリメイク版。監督トニー・スコット、脚本家ヘルゲランドという“当たりハズレの大きい”ご両人が、とぼけた味がするあのユーモラスなスリラーをどう料理するのか期待して見たが、出来は水準以上。骨太でスタイリッシュなスリラーに仕上がっていた。特に、スコット監督の真骨頂でもあるスピーディな地下鉄でのアクション描写は前作を上回る。
最大のスリルは、ニューヨークの地下鉄の(600ボルトの電流が流れる)“第3のレール”から火花が散るように、無線で会話を交わす運行指令室の主人公ワシントンとハイジャック犯のリーダーのトラボルタによる丁々発止の応酬だ。トラボルタは「生き方がうまくてもヘタでも行き先は墓場さ」などと名ゼリフを吐き、カラフルな悪役を愉しんでいる。一方のワシントンは必死かつ真剣な表情をして、コントラストを形づくっている。
物語的に一対一の対決にフォーカスするあまり、“第3の男”が魅力的に映らないことが残念だ。前作では色の名前で呼び合ったりして魅力的だった犯人グループも、今回は顔も名前も記憶できないほど存在感がないのだ。
前作の名を一躍高めた胸のすくエンディング(マッソーの表情が忘れられない)や、デビッド・シャイアのジャズィな主題曲がそぎ落とされているのが何とも惜しいと思う。
(サトウムツオ)