「あっちの方が「アメージング」」アメイジング・スパイダーマン キューブさんの映画レビュー(感想・評価)
あっちの方が「アメージング」
あのスパイダーマンシリーズが5年しか経ってないのに、設定も新たにリブートされてしまった。この手の映画のレビューはどうしても「オリジナルvsリメーク(リブート)」となりがちであるが、仕方ない。
まずキャストは全体的に好感が持てる。アンドリュー・ガーフィールドも、既に30手前なのにちゃんと高校生に見える。若干、皮肉ぶったところがあるのも原作らしくて嬉しかった(特にチンピラとの対決シーン)。エマ・ストーンはヒーロー物には珍しい行動力のあるヒロインだ。今回の悪役のコナーズ博士も「力に魅せられて悪に染まった善人」を嬉々として演じている。
そしてアクションシーンは良かったと思う。一人称視点を多用し、まるでスパイダーマン自信になったかのような効果を生む。3Dも相まって、スピーディーな演出にも迫力がある。
確かに1つのアメコミ映画として見ると、かなり完成度は高い。だがオリジナルの「スパイダーマン」と比べてしまうと、多くのポイントで昔の方が優れている。
まずスパイダーマン。前作はトビー・マグワイアが演じていたが、彼の方が全然ピーター・パーカーらしい。小柄でちょっと情けない感じも原作そのものだし、クモの力により徐々に強くなっていくところもより丁寧に描かれていた。だからこそ学校でのいじめっ子とのファイトシーンも忘れがたいし、心底彼を応援したくなる。しかしアンドリュー・ガーフィールドは割と初めっからカッコイイ。普通に身長も高いし、どこからどう見てもいじめられているようには見えない。力が覚醒するシーンも唐突な感じがした。ただ唯一評価できるのは、初めスパイダーマンになった理由がベンおじさんを殺した男を捕まえるため、という個人的なものからという点。前作は敵をあっさりとやっつけ(実際は違ったわけだが)、おじさんの残した言葉からすぐに使命感に燃えて人助けを始めてしまう。だから「スパイダーマンの誕生」という意味では今回の方が好きだ。
その他のキャストも前作の方がずっと良い。ヒロインはMJからグウェンに変わったわけだが、やはりキルスティン・ダンストの方が良かった。エマ・ストーンの方が美人なのだが、なぜだか分からないがあっちの方が魅力的だった。
ベンおじさんはどっちも良かったと思う。今回はマーティン・シーンが演じているから安定感があるし、何より原作のイメージ通りだ。ただし彼が死ぬシーンは、今回あまりにもあっさりとしていた。ピーターにはもっと葛藤して欲しかったのだが。メイおばさんは間違いなく前がベターだ。今回のメイおばさんは完全に別の人だ。これにはかなりがっかりした。
なによりもがっかりしたのは、J・ジョナ・ジェイムソンがいないこと。彼の存在が作品のトーンを明るくし、「スパイダーマン」らしくするのに。今回彼の代わりとして、スパイダーマンを捕まえることに躍起になるグウェンの父親ではあまりにも役不足だ。
悪役のリザードは可もなく不可もなく。あまりにもCGなのは気になったが、彼自身は良くできたキャラクターだと思う(原作よりも人間っぽいのが嫌だったが)。だがリザードを畏怖の存在として描き切れていない。なんというか、アクションシーンへの持って行き方が下手なのか、殺るか殺られるかの緊迫感が非常に薄い。おそらく最終目的が「リザードを倒すこと」ではなく「リザードをコナーズ博士に戻すこと」だから、生ぬるいのだろう。
他にも言いたいことはたくさんある。ただ1つ言えるのは、アクション映画としては良くできていた、ということだ。面白かったか、と聞かれたら面白かったと答えるし、人にも勧めるだろう。だが旧作の方も見たことがない人がいたら、間違いなく前の「スパイダーマン」を勧める。やはりスパイダーマンはあっちじゃないと。
(2012年8月30日鑑賞)