「意外と良かった」アメイジング・スパイダーマン alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
意外と良かった
自分は何故か電車を止める有名なシーンがあるやつをこの『アメイジング・スパイダーマン』だとずっと思ってて、映画館で観たのですがイマイチ記憶に残らなかったので、見返したいなーと思いつつも「記憶に残ってないってことは大した話じゃなかったんだろうしなー、別に良いかなー」と先延ばしにしていたのですが、今回たまたまGYAO!で無料配信されていたので鑑賞。
もしかして電車止めるシーンあるのって2かな?確かに話題になるのは2ばかりだった気が…自分は2作あったのを知らず、とにかくアメイジング・スパイダーマンといったら電車止めるやつ!と何故か信じ切っていたので今回見られて良かったです。全然電車止めるやつじゃなかった。笑
あまり話題にならない(?)割には、意外と良かった気がします。
日本ではサム・ライミ版がやたらと高評価で、スパイダーマンといったらライミ版か最近のディズニー版で、ソニーのなんて無かったかのような扱いを受けることもあるようですが、そんな冷遇されるほどかな?
ソニーのは2で中途半端に打ち切りになったせいで全然売れなかったようなイメージがついているのかもしれませんが、自分は少なくとも無印だけならそこまで酷い評価にはならない気がします。
ライミ版も3まであるけど、結局打ち切りは打ち切りだったみたいだし…なかなか何作も作り続けるのは難しいのでしょうね。
ディズニー版はアベンジャーズと共に買い占めているので、大作と絡めていけるようになり今までよりは長続きしそうですが…
個人的には最近のディズニー版の方が飽きさせないストーリー展開だったように思います(ていうかディズニーらしい展開)が、こちらはちょっと日本的な気がします。皆で力を合わせて戦おう、敵対していたキャラ同士が同じ目的を得て協力し合う、みたいな展開。
会社はお金を出すだけで監督に自由に作らせるケースと、会社がほとんど内容を決めてしまって監督は操り人形みたいなケースがあるようですが、こちらはソニーが多少口出したのかな?それともマーク・ウェブ監督が元々こういった人なの?
最近の『ギフテッド』を見ても、確かにこの監督は人間ドラマというか、成長物語や、改心みたいなものを描くのが好きみたいですね。
ディズニー版はもはや王道のアメコミをそのまま映画にしたような感じで、主人公ピーターの成長をバーン!とメインに据えて描いていますが、今作はピーターだけでなく周囲のキャラクターの人物像や成長・改心も描いています。
ピーターだけが成長するのではなく、叔父や叔母に諭され成長したピーターが、また他の誰かを諭し、人として成長・改心させる。そういった連鎖が描かれ、単純な「少年が大人になる」成長ストーリーとはまた違った物語になっています。
ただ、ピーターの成長、いじめっ子の成長、ヒロインが恐怖を乗り越える描写、ヒロインの父親の改心、博士が敵になり、また敵から改心しピーターを助ける描写など、あちこちに焦点を当てるので、主人公はあくまでピーターですが、見ている側からは若干散らかった印象を受けるのも事実です。
また、こうして後から思い返してみると面白かった、見て良かったと書けるのですが、何故か途中途中退屈で、お茶を淹れに行ったりお手洗いに行ったりと、何度か動画をストップしました。スピード感もあり、ストーリーも良くできてきたと思うのですが、何でなのかなぁ。
『バットマン ダーク・ナイト』を見た時にもそれを感じたのですが、1本の映画なのに中身が3部作っぽくなっていて流れが悪いというか、起承転結が1章ずつ途切れているような印象で、そのせいなのかもしれません。流れのスムーズな時は没頭して見ていられるのですが、ふとした瞬間「1話見終わった」感があって、「そろそろ茶でも飲むか」みたいな、集中が途切れるんですよね。なのに2時間以上あるから尚更「え、まだあと1時間もあるの?」と…つまらないわけじゃないのに、そうやって我に返る瞬間を作ってしまうと「集中途切れたし、退屈だった気がする」という印象が残ってしまうのかも。
監督の手腕と言って良いのかわかりませんが、ラストのエマ・ストーンのにっこりシーンはとても良かった。はっきりと明言せずにハッピーエンドを示唆する台詞も良い。
「ウェブ監督はとても温かみのある人柄で、演者を笑顔にしてくれる」と何かの動画で語られていたのを見ましたが、俳優陣がリラックスして演じられることでああいうシーンが撮れるのもあるのかなと思います。
どのシーンをとっても自然な表情を撮れていて、あの終わり方は特に良かったです。
アメコミヒーローの話って、どれも明るい内容の映画とはいえないので、せめて終わりだけでもああやってポジティブに終わってくれると嬉しい。最後まで暗いと後味が悪くて…ディズニー映画が「中身がない」だの「底が浅い」だの時たま言われながらも売れるわけは、「ポップで明るく、随所にジョークを挟み、暗い気持ちを引き摺らせないから」だと思うのです。最新のCG技術で、脚本も悪いわけじゃなし、俳優も物凄い努力をしているのがわかるし、でもだからといって、ディズニーで暗い気持ちを引き摺らせる映画を作ったら、途端に評価されなくなるのでは?
そのくらい、ヒーローもので「暗い気持ちを引き摺らせない」ということは大事だと思います。
もちろん記憶に残るよう、わざと胸糞悪い、後味の悪い作品に仕上げている作品もありますが、観客がそれをわざわざヒーロー映画に求めるかというと、そうではない。ある意味スポーツ観戦と同じで、皆で熱狂し、見ている間はガッカリと「やった!」が同居していて、終わった後はスカッとしていたい。ヒーロー映画はそういうものを求められているのかなと。
ところでED途中のオマケで続編がありそうな雰囲気でしたが、2で同じ敵出てくるのかな?
2は確実に見たはずなんですが、やっぱり何も思い出せません…良かったとは思うのですが、やっぱり「『アメイジング・スパイダーマン』といったらこのシーン」みたいなのもないし、インパクトは他作品と比べて足りなかったのかな?
少なくとも見て時間の無駄だとは全く思いませんが、何か物凄く心に残ったかと言われると…うーむ。
『ギフテッド』も凄く良い話でめちゃくちゃ泣いたけど、あれも「『ギフテッド』といったらこのシーン!」というものがなかったので、この監督の作品はそういうものだと思って見るべきなのかも。ライミ監督は「記憶に残る映像」を意識している感じがしましたが、ウェブ監督はどちらかというと台詞や俳優の演技が活きる作品を撮るのが上手いのかもしれません。
スパイダーマンシリーズの中では「続編がポシャった」話ばかり出される今作ですが、個人的にはサム・ライミ版に引けを取らない作品だったと思います。もしかしてライミ版も、話が重くなったから人気なくなったのでは?考え過ぎ?(^^;
機会があれば2も見たいけど、続きがあるつもりで撮った作品なのに続編が無いと思うと、なかなか手が伸びないな…
ともあれ、「電車を止める映画」程度の印象だった今作(笑)、これを機に見直せて本当に良かったです。想像していたよりずっと良かった。
…ところであの主人公たち、高校生なんだね。ディズニー版ではピーター達をわざと若い設定にして思春期の複雑な心を表現したとか何とか言ってたけど、今作も高校生じゃん。ソニー版、本当に無かったような扱いされてんなー。笑