「気持ちの潔さが哀しい 死んだ人は戻らない」愛を読むひと Bluetom2020さんの映画レビュー(感想・評価)
気持ちの潔さが哀しい 死んだ人は戻らない
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何とも前後半のギャップが激しく、考えさせらる映画だった。「青い体験」のような年上の女性との恋愛、時を経て驚愕の事実を知らされる。主人公だけでなく、下準備なしの観客も。いろんな思いが錯綜し、後でじわじわ蘇る感動。
軍事裁判で責められる彼女から、ようやく原題の事実を知る。現代では「文盲」も「無学」もやる気と機会があれば取り返しができるだろう。当時のドイツだけでなく、日本もソ連もヒステリックなまでの全体主義的統制社会で、自分の弱みを正直に話せたか? おそらく破滅的行為で、彼女自身が劣等市民として収容所に入らなくてはいけなかったかも。そんな葛藤が自分だけの秘密となり、忠実な党員として身を守るしかなかった。「あなたならどうしましたか?」 単純だけど厳しく辛辣な一言だった。
一方で、向学心の灯を消さなかったのだと思う。だから、ラスト近くの再会シーンの違和感もわかるような気がする。彼女は昔のように、物語を聞きながら仲睦まじく勉強したかったかな? 一方、彼は、虐殺に加担した彼女の行為を許しきれなかったか? 経済的援助も生活支援もするが一歩踏み出せない彼の印象が、出所後の生活不安や社会復帰の困難さを解消できなった? 残された部屋で呆然と立つ彼女の視線も、頭を抱える彼の姿も、なんとも哀しい。彼女が、勉強した本を足台にする気持ちは思い出しても辛い。
二人とも、気持ちの根底は、「死んだ人は戻らない」だったのか?
ケイト・ウィンスレットの女優賞は文句なしでした。
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