「願いのような作品」愛を読むひと 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
願いのような作品
二次世界大戦後のドイツを舞台にした悲哀の物語。
スティーブンダルドリー作品でしたが、いまいちピンとこなくてスルーしてました。
が、プライムで見かけたのでふと観てみることに。
ケイトウィンスレットの佇まいが良く、その芝居もとんでもなく惹かれるものがありました。
そして若きマイケルを演じたダフィットクロスも、その肢体が若さに満ち溢れていて別の魅力に溢れてましたね。
二人のロマンチックな逢瀬は、その時代背景に大きくその運命を歪めていく。
…といった話でしたが違いました。
いや、あくまで個人的にですが、違うように見えてきました。
裁判から急激にシリアスになり、それぞれの葛藤を描かれていきます。
その辺りからいくつもの小さな「なぜ?」があったのですが、二人を通じもっと広く描いたものに見えてきました。
裁判自体アウシュビッツ裁判でしょうし、ここを主軸のようにじっくり描いていきます。
そんな中教授の言葉は、むしろ我々に投げかけてくるようでした。
文盲とそれを隠すのはロマ族(ホロコーストと同じ虐殺対象)だとは薄々分かるのですが、それをはっきり示さないのも"あえて”なのでしょう。
後悔の念と何処か目を背けたい過去。
手紙に目を通さなかったりと、ちゃんと向き合えないやり取りの末の別れ。
そうして迎えたラスト。娘に話し始めるその姿は、まるで希望を託しているようでした。
そしてこのラストで、はっきりと自分の中で腑に落ちたのだと思います。
これはドイツそのものを描いたものではないだろうかと。
できればなかった事としたい恥ずべき歴史ナチスドイツ(ハンナ)、それを未だどう向き合えば良いのかわからないままでいる現ドイツ(マイケル)、そしてそれらを踏まえ乗り越えてほしい未来への希望(ジュリアン)。
歴史を受け継ぎ、過去に目を背けず、これからの未来へと繋ぐ。
ドイツという国への問いかけと、願いのような作品と感じました。