「甘美な物語にこもる戦争悲劇」愛を読むひと ezuさんの映画レビュー(感想・評価)
甘美な物語にこもる戦争悲劇
バスの車掌をしている疲れ果てた女性が、
ふとした切っ掛けで15歳の少年をくわえ込んだ物語の端緒は、
デボラ・カーの『お茶と同情』を思わせました。
親と子ほども離れた不実な恋物語の始まりを感じさせましたが、
謎の女の正体を求めて、
上級なシナリオはサスペンス豊かにグイグイ引っ張って行きます。
声がいいから、と少年に本の朗読をせがむ
家族の気配がない不思議な女は、
職場の勤務状態が良いから、事務職に昇進を告げられた日に失踪する。
8年後、
少年が女を見たのはユダヤ人収容所の看守だった女を裁く法廷。
不思議な女を演じるケイト・ウィンスレットが秀逸です。
目の演技が、他に比較できない印象を残しました。
彼女の出生の秘密は明かされなかったかも知れませんが、
少年の経験は、彼の一生に大きな影をもたらす、
甘美な初恋だったことは間違いありません。
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