劇場公開日 2009年6月19日

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「原作よりずっと良かった」愛を読むひと talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0原作よりずっと良かった

2021年5月7日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

この映画を勧めて下さった皆様、ありがとうございます。やっと、配信ではありますが観ました。とても良かったです。ケイト・ウィンスレットが素晴らしい女優であることも改めて確認できました。彼女のしっかりした骨格がトラムの車掌の姿、裁判所での佇まいをきちんと格好良く見せてハンナの真面目さを表していました。そして繊細で戸惑いつつ決断する彼女の表情の豊さに引き込まれました。

原作が出てすぐ読み、私は主人公の男(ミヒャエル)に非常に怒りを覚えこの本が大嫌いになりました。もっと言えば許せませんでした。それがこの映画を見ていなかった理由の一つです。

映画では、マイケル(原作:ミヒャエル)役のデビッド・クロスがギムナジウムに通うまだ15歳でお行儀よく誠実で、初めての愛と経験にのめり込む男の子を可愛らしく素敵に演じていました。お家はインテリ。思春期の息子を見守る両親も良かったです。母親はその後もずっと息子を見ていました。ハイデルベルク大学で法学専攻になってゼミを受け、ハンナがまさに被告である裁判見学の時のマイケルの苦悩もまっすぐ伝わりました。

大人になり弁護士になってからのマイケルを演じたレイフ・ファインズも良かったです。ただ、なぜ返事を書かなかった?学習して文字が書けるようになった人と文通するなんて問題外とインテリのあなたは思ったのでしょうか?或いは「ナチ」と無関係でいたかったのでしょうか?あなたはどういう「弁護士」?
妻と離婚後も娘とはいい関係を持ち、ハンナが涙を流していた教会に娘を連れ「僕が15歳の時に…」と娘に語るという設定は懺悔でもあり美化と逃げも絶対あるでしょうが、悪くないと思います。というか許します。

ただ、釈放されることになったハンナに15歳の夏以来初めて再会して、彼女と交わした言葉と彼女に尋ねた内容を除けば、です。私がハンナの立場であれば彼女と同じ選択をしたでしょう。

評価の高かったこの映画を見ていなかったもう一つの理由は、原作がドイツ語で極めてドイツの話なのに映画での言語が英語だったからです。ベルリンの街も郊外(ポーランドやチェコでロケをしたのでしょうか)も明らかにヨーロッパ北部の風景でした。ブラジャーにアイロンかけるのも、体を洗うのに使うのが封筒型のタオルであるとか、法学専攻学生は学内でもネクタイしているとか、誕生日は何にもまして大切であるとか、恐らく今でもドイツで普通のことを細かく再現して映していたのは本当に良かったです。でも、あのナチ関連の裁判が英語でなされたこと、ハンナに朗読する作品は色んな言語が原作であっても全部英語だったのは非常に残念でした。裁判は言葉が命、そして朗読はドイツ文化の一つだからです。

でも、良かったです。

法学の教授がブルーノ・ガンツ!裁判で発言した、母と共に生き残ったユダヤ人役の可愛い娘がアレクサンドラ・マリア・ララ(「ラッシュ」でニキ・ラウダの妻役、「コリーニ事件」では主人公の父親代わりの娘役)!嬉しかった。

おまけ
思わず笑ってしまったのは石炭持って来いの指示。案の定、マイケルうまくできず顔が真っ黒。「アンモナイト」もそうでした!

talisman
Mさんのコメント
2023年3月1日

私も原作を先に読みました。映画を見た頃はケイト・ウィンスレットさんが苦手で、深く映画に入り込めませんでた。
文盲をそこまで恥じる感覚が、まだよくわかってなかったせいもあります。命よりも、人に文盲であることを知られないことを選ぶなんて、という感覚です。
何人かの方々のレビューを読み、もう一度見てみようという気持ちになっています。

M
kossyさんのコメント
2022年11月23日

talismanさん、いつもありがとうございます。
劇場鑑賞当時は転職直後ということもあり、衝撃的だったために感想を書けずにいました。
学校での講義の内容がかなり伏線となっていたこともあり、マイケルの取った(取らなかった)行動にいらつきさえ覚えてしまいました。刑を軽くしたところで、彼女は喜ばないのじゃないか、色々逡巡、苦悩したのだと感じました。
数年経ったらまた観てみたい。そう思える作品でした。

kossy
きりんさんのコメント
2022年11月23日

こんにちは
kossyさんが素晴らしいレビューを書かれましたねー。
talismanさんの書き込みを見て、改めてこちらにもご挨拶を。
いいレビューを共有出来るのもこのサイトの良さですね。

きりん
るーさんのコメント
2021年12月17日

talismanさん、こちらこそ沢山のコメントをありがとうございます。そして、読書家なんですね、素晴らしい。この映画のレビューをもう一度読み、『体を洗うタオルが封筒型』とは気付いてなかったです。ブラジャーにアイロンのシーンは、え?と思いましたけど。笑笑
ケイト、ウィンスレットさん、体から滲み出る演技で、素晴らしかったですね。

るー
カールⅢ世さんのコメント
2021年5月8日

原作お読みになっていたのに映画は敢えて見なかったとは。すごい。尊敬します。その主な理由がミヒャエルが嫌いであることと、ドイツ語でないこと。共感のポイントもドンピシャで、嬉しくなりました。石炭の場面のアンモナイトとの共通性。やはりアンモナイトの監督もこの映画をすごく意識しているにちがいない。ケイト・ウインスレットすごいです。この映画 ALLTIMES BEST には含まれていないのがわたしとしてはちょっと残念ですが、ちょっと嬉しくもあり。

カールⅢ世
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2021年5月8日

すすめておきながら、見たのは何年も前なので、細かいところは忘れてました😅
talismanさんのレビューでおぼろげに記憶が戻ってきました。
戦争がなかったら、彼女の運命は違っただろうに、と切ないです。
ケイト・ウィンスレットは繊細な演技で、本当に良かったですね。

ぷにゃぷにゃ
NOBUさんのコメント
2021年5月8日

すいません・・。先ほどのコメント
”あの方に酔うな、”⇒”あの方の様な”
お恥ずかしい・・。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年5月8日

おはようございます。
 私も、今作本で読んでいたのですが、映画は見ませんでした。
 そしたら、ビックリ!
 私も”ケイト・ウィンスレットが素晴らしい女優であることも改めて確認できました。”
 「アンモナイトの目覚め」も良かったですけれど。
 あの方に酔うな、正統的美人女優さんが、年齢を重ねていく中で映画に出演するのって、大変ではないかなあ・・、と思っていたので、良い年の重ね方をされている女優さんだと思いました。
 では、又。
 これからもよろしくお願いします。

NOBU
しろくろぱんださんのコメント
2021年5月8日

初めまして。
たくさんの共感ありがとうございます。

すごく惹き込まれました。字が読めない彼女にとって朗読してくれる青年が愛おし存在だった。
そして青年にとっては母親の様な温かさを感じて安心できる場所だった。
とてもいい映画でした。

しろくろぱんだ
きりんさんのコメント
2021年5月7日

ミヒャエルが嫌いで、だから映画は見なかった・・って、talisman さん、本当にまっすぐにこの作品に対面なさったんですね。
あまりにも重たくて、僕はこの映画、死ぬまでにもう一度観ることはないだろうなぁという感じです。
ドイツ人にとってはテーマがテーマだけに、自国で自分たちの言語で制作することの辛さもそこにあったかもですね(アメリカに助けてもらってやっと作ったというような)。

きりん