「【人間の善性と自覚なき悪性と、知性との関係性をある側面から描いた哀しき作品。自分の尊厳を保つために、知性無きことを恥じ、隠したために起きた事の悲劇を描いた作品でもある。】」愛を読むひと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【人間の善性と自覚なき悪性と、知性との関係性をある側面から描いた哀しき作品。自分の尊厳を保つために、知性無きことを恥じ、隠したために起きた事の悲劇を描いた作品でもある。】
―多くの第二次世界大戦前後のナチスドイツを描いた作品で表現されるSSは残虐極まりない人々として描かれている。が、今作は別の角度からSSとして働いたある哀しき女性の生涯を描き切った作品。-
■今作の印象的な部分
<前半>
1.15歳のマイケル少年が、一夏、年上の女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)との交情シーンや自転車での小旅行も含め、楽しく過ごす姿。
取り分け、マイケルがハンナに”オデュッセイヤ””チャタレイ夫人の恋人””タンタンの冒険””犬を連れた奥さん”といった多種多様の本(漫画)を読み聞かせるシーン。
”貴方は、朗読が上手ね・・”
2.ハンナの真面目で頑固な気性が分かるシーン幾つか
・”チャタレイ夫人の恋人”のマイケルの朗読を途中で遮るシーン。
・路面電車内での、真面目に働く姿。
ーそして、彼女はその働きぶりを認められ、事務係に昇進し、マイケルの前から姿を消す・・。-
<中盤>
3.大学の法科に進学したマイケルがローチ教授(ブルーノ・ガンツ)のゼミの一環で、ナチスの裁判を傍聴するシーン。久しぶりの傍聴席から見るハンナの姿。激しく動揺するマイケル。
裁判長から語られる彼女を含めた女性看守たちが、ユダヤの人々に行ってしまった事。他の女性看守が自らの罪をハンナに被せようとする姿。ハンナは“看守としての仕事を全うしただけ”と答えてしまい・・。
ーマイケルは、その時ハンナの”ある事実”を知るが・・。(煩悶するマイケルの姿。)そして、同じゼミの女性と恋仲に落ちるが、ハンナの事が忘れられず。-
<後半>
4.無期懲役を言い渡されたハンナに届けられる大量のカセットテープ。震える手で再生ボタンを押すハンナ。
ーレイフ・ファインズが演じる成年になったマイケルが次々に且つて自分がハンナに読んで聞かせた本を朗読し、カセットテープに録音する姿。刑務所でそれを聞くハンナの姿は可成り沁みる。
又、ハンナがマイケルの朗読を聞きながら、独学で文字を学ぶシーン。そして、拙い手紙をマイケルに書くシーンも可成り沁みる。
幾つになっても、ハンナがマイケルを優しく“坊や”と呼ぶシーンも。-
5.釈放が決まったハンナが取った行動・・。
<今作でハンナが犯してしまった罪は到底許されるものではないが、従来のナチス映画では得られない類の哀しき思いを抱いてしまった作品。
又、人間の善性と悪性と知性との関係性も考えさせられる作品でもある。>
”傍聴“という言葉にハッとしました。
裁く者、裁かれる者、そして『”傍ら“から”聴く“だけ』の野次馬や大多数の第三者、そして無関心の衆人。
奥が深い骨太の映画でした・・
弟が司法書士として裁判所に詰めているんですが、
年末大晦日にはクライアントがバタバタと自殺するんだそうです。(12月31日と1月1日のたった1日の日付けの違いに過ぎないのに債務者は心が折れて)。
裁判物の映画を観ると奮闘する彼を想います。
「頑張りすぎるなよ」というNOBUさんのお仕事場での声掛け。沁みました。