「残酷で、重いけど…イイ映画です。」チェンジリング mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
残酷で、重いけど…イイ映画です。
監督クリント・イーストウッド。主演アンジェリーナ・ジョリーという、豪華なタッグが実現した本作。実話を基に、“魂を揺さぶる映画”に仕上げています。さすが名監督に名女優。
何とも恐ろしい、そして残酷な“実話”です。『警察には腐敗が付き物』というのは、古今東西を問わず存在するお話ですが、それがここまでひどく警察内部だけでなく、一般市民をも被害に巻き込んでいた。しかもそれらが当たり前の如く行われていたなどとは、言語道断ですよ。誰がどう見ても、おかしな話が、『警察がこう言ってるから』ってだけで罷り通ってしまう…。背筋が冷たくなる、ホントに恐ろしい話です。
1920年代といえば、まだまだ女性の地位は低かったと思われます。そんな時代にも敢然と不正に立ち向かったクリスティン。彼女を支えたのは、ただ『息子を救いたい!』と言う一念でした。それがやがて社会全体を動かして行くのです。それほどまでに、母の愛は偉大なのです。この映画は、そのことを改めて認識させてくれます。またアンジェリーナは、この芯の強い女性を非常に好演しています。これは、アンジー自身がやはり“母親”であるという点が、役を演じる上で反映された結果だと思います。もともと持ち合わせている演技力に加えて、彼女の内面から滲み出てくる“母性”というものが、“気丈に闘う母親”の姿となり、スクリーンに映し出されるのです。アカデミー賞は獲れませんでしたが、アンジー渾身の演技は一見の価値アリです。
そしてイーストウッドが、実に見事な仕事をしていますね!下手をすれば安っぽい“お涙頂戴映画”となってしまいそうなこの“残酷な実話”を、非常に淡々と、それでいて優しく撮りあげています。かなり衝撃的な事実が次々と展開するのですが、そういうシーンでよく流れるおどろどろしい音楽が、この映画では一切流れません。イーストウッド自身が担当し、盟友であるレニー・ニーハウスの手に委ねられた、この映画の音楽は、とても優しく観ている我々を包み込んでくれます。かつて、このような衝撃的な映画から、こんな優しい音楽が流れてきたことがあっただろうか?吾輩は映画館を出た後、ず~と、自問しておりました。それだけ、この映画の音楽は、ある意味“衝撃的”でした。ホントに素晴らしいです。
残酷で重い話ですが、イイ映画です。久しぶりに洋画を観て、涙腺が緩みました。それだけ、最近の洋画には“当たり”がなかったような気がします。