劇場公開日 2009年12月23日

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「【81.2】アバター 映画レビュー」アバター(2009) honeyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【81.2】アバター 映画レビュー

2025年8月31日
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作品の完成度
2009年の公開当時、映画界の常識を塗り替えた革新的作品。ジェームズ・キャメロン監督が10年以上構想を温めたその世界観と、それを実現するための3Dおよびモーションキャプチャー技術の融合は、単なる映像技術の披露に留まらない。CGと実写の境目を曖昧にし、観客を文字通りパンドラの世界に引き込むその没入感は、今日の映画体験の基準を確立した。物語自体は、普遍的な「開拓者と先住民の対立」という古典的かつ王道なテーマ。しかし、このシンプルさが逆に、圧倒的な映像美とディテールに富んだ世界観を際立たせている。人類の傲慢さや環境破壊への警鐘といったテーマ性も強く、娯楽性と社会性を両立させた完成度の高さが特徴。作品としての総合力は、単なるSFアクション映画を超えた、映画史における重要なマイルストーン。
監督・演出・編集
監督はジェームズ・キャメロン。モーションキャプチャーを駆使した「アバター」という画期的な手法を導入し、俳優の表情や動きを細部までナヴィに反映。この演出が、キャラクターに深い生命力を与え、観客の感情移入を促す。編集は、162分という長尺を感じさせないテンポの良さ。パンドラの生態系を丹念に描くパートから、後半の壮大な戦闘シーンまで、緩急をつけた構成が見事。特に、ジェイクがイクラン(空を飛ぶ生物)と絆を結ぶシーンや、ホームツリーが破壊されるシーンの迫力は、キャメロン監督の卓越した映像演出手腕の賜物。
キャスティング・役者の演技
物語の核となるキャラクターを演じる俳優陣の演技も見どころ。特に、モーションキャプチャーを通して表現された演技の機微は、CGキャラクターの感情を豊かに伝える。
* サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)(321文字)
半身不随の元海兵隊員という現実世界での葛藤から、パンドラで新たな肉体と人生を得ていく過程を力強く演じている。当初は任務遂行のためにナヴィに接近するが、彼らの文化や生き方に触れる中で、徐々に精神的な変化を遂げていく。その心の揺らぎや、次第にナヴィの一員としての使命感に目覚めていく様は、モーションキャプチャーによるジェイクの細やかな表情と連動し、観客に強い共感を呼ぶ。肉体的な不自由さからの解放、そして新たな自己の発見という、物語の根幹を支える彼の演技は、この映画の成功に不可欠な要素。
* ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)(214文字)
ナヴィの戦士ネイティリを、モーションキャプチャーと声の演技で完璧に体現。原始的な強さと、ジェイクへの愛、そして故郷を思う深い感情を表現。特に、ジェイクにパンドラの自然の摂理や生き方を教える際の神秘性や、故郷が破壊される際の激しい怒りは、サルダナの感情豊かな演技がなければ生まれなかった。彼女の演技は、単なる異種族のヒロインという枠を超え、パンドラという世界の魂を体現する存在感。
* シガニー・ウィーバー(グレイス・オーガスティン博士)(156文字)
アバター計画の責任者であり、ナヴィとの共存を強く願う科学者。当初は現実主義者としてジェイクを導くが、次第にナヴィの文化への深い愛着と人類への失望を露わにする。ウィーバーの硬質でありながらも内面に熱い情熱を秘めた演技は、知的なキャラクターに人間的な深みを与えている。彼女の終盤の役割は、物語の悲劇性を高める重要な要素。
* スティーヴン・ラング(マイルズ・クオリッチ大佐)(150文字)
冷酷で好戦的な元海兵隊員であり、人類側の絶対的な悪役。パンドラの資源採掘のためには手段を選ばず、ナヴィを排除しようとする。ラングは、その威圧的な佇まいと容赦ない言動で、観客に強烈な不快感と恐怖を与えることに成功。彼の存在は、物語の対立構造を明確にし、ジェイクの行動原理を際立たせる上で不可欠な存在。
脚本・ストーリー
物語は、普遍的な「もののけ姫」や「ダンス・ウィズ・ウルブズ」にも通じる「異文化への適応と自己のアイデンティティの再構築」というテーマ。シンプルながらもメッセージ性が明確であり、複雑な設定を必要としないことで、観客は映像体験に集中できる。環境破壊や先住民の文化侵略といった重いテーマを扱いながら、エンターテインメントとしての高揚感を失わない脚本。
映像・美術衣装
本作の最大の功績は、革新的な映像表現。生きた森のように呼吸する惑星パンドラの描写は、視覚的驚きに満ちた体験。自ら発光する植物、幻想的な夜の森、そして多種多様な生物たちのデザインは、想像力の限界を超えた美術。ナヴィの衣装や装飾品も、彼らの文化や精神性を反映しており、細部にわたるこだわりが世界のリアリティを高めている。これは映画の美術における新たな金字塔。
音楽
ジェームズ・ホーナーによる壮大で美しいスコア。パンドラの大自然やナヴィの文化を想起させる民族音楽的な旋律、そして激しい戦闘シーンを盛り上げるオーケストラサウンドが、映像と完璧に調和。主題歌「アイ・シー・ユー」は、レオナ・ルイスの透き通る歌声が、物語の壮大なスケールと感動を彩る。
アカデミー賞・その他受賞歴
本作は、第82回アカデミー賞において、作品賞を含む9部門にノミネート。そのうち、撮影賞、美術賞、視覚効果賞の3部門を受賞。視覚効果賞は、本作の技術的偉業を象徴する受賞。また、第67回ゴールデングローブ賞では、ドラマ部門作品賞と監督賞を受賞。
作品
監督 ジェームズ・キャメロン 113.5×0.715 81.2
編集
主演 サム・ワーシントンB8×3
助演 ゾーイ・サルダナ B8
脚本・ストーリー ジェームズ・キャメロンB+7.5×7
撮影・映像 マウロ・フィオーレS10
美術・衣装
美術
リック・カーター
ロバート・ストームバーグ
衣装
マイェス・C・ルベオ
デボラ・L・スコット S10
音楽 ジェームズ・ホーナー
主題歌
レオナ・ルイス A9

honey