「わざわざ3Dで自国批判?、は都合良すぎるなあ」アバター(2009) こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
わざわざ3Dで自国批判?、は都合良すぎるなあ
めがねの上から3Dメガネをかけて、なんとなく頭に圧迫感をうけながら観ていたせいか、前半はめくるめく映像美をけっこう観疲れてしまった。ちょっダルさを感じてきた後半、派手なアクションシーンの連続となって、スクリーンにのめり込んで映像の素晴らしさに気分ものってきたところで映画が終わってしまった、というのが全体の感想。ただ、観疲れたのは字幕版を選んだせいと思っている。吹替え版なら3D映像に最初からのめりこんで楽しめるだろうから、これから観に行かれる人には吹替え版をおすすめしたい。
映像はともかく、内容は、最初はベトナム戦争の話でもするつもりかと思いきや、アバターのCGが、まるでアメリカ先住民と感じてしまってからは、これまでのアメリカの他国や他民族支配方法への強烈なアンチテーゼばかりを見せられてしまった、との印象が残るものだった。9.11も自ら招いたこと、と言いたげのキャメロン監督の演出ぶりだったが、それにしては筋立ての中にはご都合で進めていたところも目立ったし、結局武器がないと相手にならない連中、との「上から目線」のような演出もあったりと、あまり感心できない点が目立ったのは、せっかくの素晴らしい映像なのにもったない、との印象が残った。
さらに、ネタバレになるのであまり言えないのだが、舞台となった星に生息する木々や自然形態にどんな秘密があるのか、その肝心なところが結局ボヤけてしまったままだったのは、どういうことだったのか。パート2を製作するからならばまだ理解できるが、この作品の核の部分を素通りしたままで終わらせてしまったのなら、時間と労力を費やした意味がなかったように思う。
内容には残念な部分はあるが、この作品の3D映像は間違いなく一見の価値のあるものだ。長年、さまざまな実験的映像を見てきた私は、映画界はついにここまできたかとの感慨で胸がいっぱいになり、できることなら「エイリアン2」を3Dでもう一度、と思いながら清々しい気分で映画館を出た。この作品、映画好きを自認する方には、ぜひ観ることをおすすめしたい逸品と思っている。