「時代を画する傑作」アバター(2009) きーのさんの映画レビュー(感想・評価)
時代を画する傑作
ストーリーに目新しさがない,展開がすぐにわかってしまう,というレビューが多いが,3D+CGの技術を駆使する新次元のSFファンタジーというだけで,けっこうぎらついた感じがするのに,それに濃い内容のストーリーをかぶせたら,ただ疲れる代物になってしまうだろう.
この手の映画をマニア側に寄らず万人受けするものに仕上げるという監督の目的は見事実現している.内容は決して陳腐ではない.スピルバーグのようないやみなお遊びもない.技術にもストーリー展開にも気をそらされず,170分という長尺を感じさせないような,ちょうどよいラインに映画を落ち着かせた手腕はすごいとしか言いようがない.
その昔ターミネーターを劇場で見て,低予算で良い映画を作るなとある意味感動したが,あの簡易特撮が,タイタニックの儲けを経てここに花開いたとすると,タイタニックもそう悪くはなかったな,と思う.
基本的な筋立て・道具立ては王道のハリウッドスタイルだが,ジブリアニメからの引用と思われるシーンが多数あった.ラピュタはもちろんだが,森の中の静かなシーンはナウシカの導入部を思い出させる.森との共生関係はナウシカのメインテーマだった.しかし全体としては,もののけ姫の印象が強かった.
植民・アメリカ原住民,戦争,異文化交流といったいろいろな切り口が用意されているが,CGのすばらしさを味わえる単純に楽しい映画だ.
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