「新たな伝説の始まり」スター・トレック かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
新たな伝説の始まり
自ブログより抜粋で。
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冒頭のエピソードから無駄がない。
本編の主人公であるジェームズ・タイベリアス・カーク(クリス・パイン)の誕生を描きながら、同時に父である“伝説の船長”誕生のエピソードにもなっている。
さらに、このときの事件自体が今作の中で重要な意味を持っている、と、シナリオ構成上、これ以上ない巧みな導入部。
また、この映画が最近流行りのビギンズものと見せかけて、実は旧シリーズからの正統な続編で、且つ、旧シリーズをリセットして世界観を再構築するとは、なかなかうまいこと考えたもんだ。(観てないと意味がわかんないだろうが、観れば納得する)
『スター・トレック』シリーズはこれだから世界中から愛されるんだろうと思わせる魅力的な人物造形が、これまたすこぶる心地いい。
本作は新生カークと新生スポックの友情物語と見られがちだが、少なくない登場人物のキャラの立った群像劇としても群を抜いていいんだ。
古くからのファンのファン心理をくすぐるエピソードを織り交ぜながら、それが新しい観客への登場人物紹介として機能していて、ユーモアの効いたセリフの応酬にもニンマリさせられる。
「キャプテン」の呼び間違いや、「ノーコメント」とか、本筋とは関係ないセリフなのに、よく思いつくなと。
初代USSエンタープライズ号船長クリストファー・パイク(ブルース・グリーンウッド)が将来を決めかねていた青年ジェームズに入隊を勧めたときの、「キミの父が船長だった時間はたった12分。でも800人の命を救った。キミを含めて。」とのセリフにはマジしびれた。だから“伝説の船長”なんだ。
SF的にはタイムパラドックスの扱いに緩さを感じはしたけれど、まあ、転送装置で瞬間移動したり、ビーム銃がピュンピュン飛び交うような空想科学娯楽映画で、目くじらを立てるほうが野暮ってもんで、楽しんだもの勝ちと思います。
なにはともあれ伝統的スペースオペラが復活するのは嬉しい限り。
今回は若い世代への橋渡し自己紹介としての色合いが濃かったけど、次回作では『スター・トレック』本来の魅力である、“未知なる宇宙”を満喫させてくれる続編を期待したい。