「クレイアニメとは違う「生々しさ」」ファンタスティック Mr. Fox ペロラさんの映画レビュー(感想・評価)
クレイアニメとは違う「生々しさ」
予告編でお父さん狐のMr.FOXがパンケーキを貪り食うシーンを見て、ヤン・シュワンクマイエルを思い出した人は、結構「いい」かもしれない。
この作品、ストップモーションのアニメーションなんだが、実は他にあるような一般的なクレイ・アニメーションでない。
1秒24コマの微妙にギクシャクした感じ。
人形はみな毛に覆われて(動物だから当然)かつ洋服を着て。
撮影監督が「ウォレスとグルミット」シリーズのトリスタン・オリヴァーだったりするのだが、当然彼は撮影監督なので監督ではないので、作風はそういうかわいらしい感じではない。
それどころか微妙なコマ数の少なさ、そう1秒24コマから来る何ともいえないぎこちなさ、ぎこちないからこそ半端な生き物の動き、そう逆に妙な「生々しさ」を感じる。
そしてその代表的なものが先の「食べる」シーン。
まさに、シュワンクマイエルもこだわった「食べる」という生々しさを表現する手段。
例えばそれは泥を顔に擦り付けるシーンや、ネズミが最後にリンゴ酒を飲むシーンなど・・・
さらに最後にネズミが発する台詞なんて・・・!
そんな感覚を始め、この映画はアニメーションではあるものの、描写も、そしてジョージ・クルーニー扮する大人なMr.FOXの台詞や動き、人間(いや動物)関係、さらに(本物の)人間とのブラックな確執など、完全に大人向け。
極みは最後の逃走シーンでのあのxxとの遭遇での間なんて圧巻・・・
監督のウェス・アンダーソンは、子供の頃読んだ原作の穴掘りのシーンが好きで、自分も庭に穴堀まくった子供時代を送り、そしてそのまま大人になって映画化してしまったくらい、この映画は子供の時の強烈な思い出から製作した作品なのだけど、出来てみれば子供にはどれだけわかるのか・・・
いや待てよ、実はこの生々しさ、子供だからこそもっと感覚的に理解できるのかも。
本当は子供こそ、実はこういうものを「面白い」と思うのかも・・・
それがわからない自分はもう「大人」側の感覚になってしまったのか・・・