「ドラマ描写は弱いが緩むことなく、奇跡的にまとまっている」ジャスティス・リーグ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマ描写は弱いが緩むことなく、奇跡的にまとまっている
"アメコミ馬鹿"向けエンターテインメント映画。かくいう自分も"馬鹿"の一員として、十分楽しませていただきました。
しかし冷静に映画ファンとしては、アベンジャーズシリーズのキャラクターを置き換えただけ。DCEUシリーズ(後述)の、新登場するキャラクターのプロフィールを紹介のための単なるイベント作品にすぎない。
クリストファー・ノーラン監督の創り上げたバットマン、"ダークナイトシリーズ"から、DCコミックを引き継いだのはザック・スナイダー監督(「300 <スリーハンドレッド>」)だ。当初は「マン・オブ・スティール」(2013)でスーパーマンの原点を描き、スーパーマンのリブートシリーズを構築する予定だったかも。だから「マン・オブ・スティール」だけ宇宙SF作品の雰囲気が漂っている。
ところがワーナーブラザースの、アベンジャーズへの羨望から企画された金儲けシリーズ、"DCEU"="DCエクステンデッド・ユニバース(DC Extended Universe)"が、始まってしまう。以来、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」(2016)、「スーサイド・スクワッド」(2016)、「ワンダーウーマン」(2017)と作られてきて、本作で5作目となる。結果、総合監修としてザック・スナイダーが陣頭指揮を執らなければならなくなった。それがついにザックの降板にまでつながる。
アベンジャーズの"マーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe)"がすでに17作品で、いまさら復習する気にすらならないという人には、まだ間に合う? とくに「ワンダーウーマン」は、本作の前に観ておいたほうがいい。キャラクターの多くがアベンジャーズの設定に類似している中で、"ワンダーウーマン"の女性ヒーロー性は、DCEUの唯一の特筆すべき部分でありシリーズ作品としても最も成功している。
今回、DCコミックファンにはお馴染みの"フラッシュ"、"サイボーグ"、"アクアマン"が新登場する。確かに本作は、キャラクター紹介のためのイベント映画ではあるものの、つながりで緩むことなく、テンポよく2時間を駆け抜ける。飽きるヒマを与えない。
本当は、生き返ったスーパーマンを翻意させる動機の部分に、尺が必要だったように感じるはずだ。"地球人(人間)"は蚊帳の外で、宇宙人と超人たちが勝手にケンカしているだけ(笑)。肝心なドラマ要素を欠いた作品ともいえる。しかしながら、新キャラクターを一気に投入しながら、ストーリーを破たんさせずにまとまっているのは奇跡に近い。
ディズニーのMCUほどではないが、本作の国内上映は6バージョンある。2D字幕/吹替版、3DはIMAX字幕版、4D系(MX4Dと4DX)は自動的に"3D吹替版"になる。そのほかにドルビーATMOSの2D版がある。
興味深いのは、アスペクトがアメリカンビスタ(1.85:1)を採用している点。これまでの4作品はすべてシネスコ(2.35:1)だったので、不思議である。IMAX上映と共用しやすいのはビスタなので、本作のオリジナルはIMAX3Dで観るべきなのだろう。
ザック降板後の不安は、「アベンジャーズ」(2013)、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015)の監督・脚本を務めたジョス・ウェドンがDCEUを引き継いたこと。パクリシリーズも、オリジナルの監督を引き抜けば大丈夫だとでもいうのだろうか。
それでもやはり追いかけてしまう。次作は「アクアマン」(2018)の単体スピンオフが予定されている。
(2017/11/23 /ユナイテッドシネマ豊洲/4DX吹替/ビスタ/吹替翻訳:アンゼたかし)