「前へ進み続けなければいけないのは大人たち」ルイスと未来泥棒 Kobyさんの映画レビュー(感想・評価)
前へ進み続けなければいけないのは大人たち
2008/08/01 鑑賞
母に捨てられた子が母の顔を一目見るべく、記憶スキャナーなるものを開発しようとするものの、その開発がきっかけで物語が急変していくというストーリー自体の題材はとても良いと思いました。
また、本作のテーマでもある「前に進み続けよう」というメッセージ性もとても良い。
だけど、そのとても良い題材と良いテーマの使い方が少々悪かった気がする作品でした。
まず、本作は上映時間が95分と短めなのもありますし、アニメ映画なので少なくとも半分は子ども向けに作られた映画だと思うんですが、本作は95分という短い時間で取り上げるには少々難しい題材なんです。
未来と現代を行ったり来たり。
また、登場人物の数も多い。
さらには、家族愛も伝えようとしている。
これら全てを短時間で表すのはかなり難しいはず。
その証拠に本作ではそれらの説明をするために少々足早な展開になっていて、感情移入がしにくくなっている。
そう考えると中盤の、未来の家族を説明するシーンは本当に必要だったのかなと思える。
ここは思いきって登場人物を減らし、主要人物(祖父、祖母、母、ウィルバーなど)とルイスだけとの絆を深めるような展開にした方が良かったのではないか?
そうすることで、ラストの感動シーンであるルイスの決断も未来の家族がいるからという意味が強まり、より感動を呼べたのではないかなぁ。
そして、最大の問題は本作のテーマである「前へ進み続けよう」というメッセージ。
これは非常に良いメッセージではあるのだけど、「子どもに伝わるメッセージではない」と思うんです。
無邪気な子どもというのは言われなくても前しか見ずに生きてます。
すぐに過去を振り返ってしまうのは、過去に後悔や未練がある「大人たち」なんです。
つまり本作のメッセージというのは大人にこそ伝わるメッセージなため、子ども向けに作った映画には向かないテーマだったかと・・・
まとめると、初めから大人向けに「前へ進み続けよう」というメッセージ性を基に、120分くらいの時間を費やし、しっかりと登場人物の説明や絆を深め、もっとストーリーに深みをもたせてればもっともっと良い映画になっていたのではないかと思われる作品でした。
2008/08/01