「物語は真実より遥かに陳腐」GOEMON にゃらんさんの映画レビュー(感想・評価)
物語は真実より遥かに陳腐
人物も物語もセットも衣装も
決して史実に基づかなければならないわけではないのでその辺に冒険があってもそれはそれで良いと思います。
だからこの映画にがっかり!したのは
そんなことではありません。
全編テレビの水戸黄門もびっくりの
ぺらっぺらな薄っぺらい勧善懲悪ストーリー!
この映画のおかげで初めて水戸黄門ってすごいなぁ~。
まとまっているなぁ、プロの作品だなぁ~と思わされました。
「真実は小説よりも奇なり」といいますが
「物語は真実よりものすごーく遥かに陳腐」って感じです。
映像はそれなりにオリジナリティーがあり
雰囲気もあるとは思いますが、
とにかく隙間無くごちゃごちゃ詰め込み過ぎでシンプルと対極にあります。
好みの問題ですが、
私は弾かれない、たたかれない音。
語られない言葉、
描かれない色というものに価値を見出します。
その行間、音間、空間にひとりひとりの解釈が入り込む余裕や遊びがあって作品は完成すると思っています。
ですからこのような映像は全く好みではありません。
ですがこの映画の魅力はやはり映像だと思います。
それなのに後半の最後の戦闘部分はやっつけ?と思うほどで、落としどころもアイデアが充分に出なかったんじゃないだろうかと思っちゃいました。
戦闘シーンでいきなり『300』の模写に・・・これは時期からいっても作為的です。
なにしろ『300』の映像は当時大変話題になりましたから。
あのごちゃごちゃした映像を撮られる紀里谷氏にとっては、まさに衝撃だったと思われます。
一番のヤマ場のシーンで映像もアイデアもパクリとは、観た時間自体後悔しちゃいます。
クライマックスシーンの演出もその後の余韻も意外性を出したつもりかもしれませんが『陳腐』の一言・・・
とにかくこの脚本の稚拙な勧善懲悪っぷりを映画で観させられるなんて、それ自体が悲しくて泣きそうでした。
私にとってこの映画は『理解出来ない』のではなく『理解するものがない』のです。
あるとするなら、脚本も映像も作り手の『作為ある自己満足』を見せられたということだけです。
ただ、一緒に観た日本語があまり出来ず
ほとんど内容を理解出来ない外国の方は
「なかなか面白かった」と言っていたので
言葉が判らなくて、映像に興味がなかったら良い映画なのかもしれません。