夜顔のレビュー・感想・評価
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ストーカーおじいちゃんの話だが、すべてのショットが芸術
ルイス・ブニュエル「昼顔」の続編として作られた作品。
おじいちゃんが40年越しのストーカー活動を再開する話だが、あまりにも優れた映画術により、なぜかそれが洒脱な大人の遊びみたいに見えてしまう。
とにかくすべてのショットが芸術。インテリア店前の俯瞰ショット、ホテルでの食事シーンなど2人の会話がない、あるいは聞こえないサイレント的なシーンは特に圧巻。
前半の追跡、バーでの会話、ホテルでの食事、いずれのシーンも画面の隅々にまで愉悦が満ちており、「映画を観ている」感覚・体験が強烈だ。
ちなみに「昼顔」の謎2つ、すなわち、
・東洋人の持っていた箱の中身は?
・ユッソンはセヴリーヌの秘密を夫に告げたのか?
について言及するシーンがあるが、いずれも明らかになることはない。
タイトルなし(ネタバレ)
パリのコンサート会場。
アンリ(ミシェル・ピコリ)は、ある女性(ビュル・オジエ)を見かける。
彼女の名はセヴリーヌ。
かつての友人の妻で、今は未亡人。
コンサート終了後、アンリはセヴリーヌを追いかけるが・・・
といった物語で、ブニュエル『昼顔』の後日譚。
『昼顔』は40年ほど前に観たきり。
細部は忘れていましたが、本作中で、バーテンダーに対してアンリがいきさつを語るので、観ていなくても忘れていても大丈夫なつくりになっています。
さてセヴリーヌをつけ回したアンリは、運よく彼女を捕まえることが出来、ディナーをともにする。
そこで、彼は奥底のサディズムを静かに静かに発揮する・・・
ディナーのカメラポジションが秀逸で、最初は窓を奥にして左にアンリの席、右にセヴリーヌの席。
この時は、まだセヴリーヌは到着していない。
彼女が着席した後、カメラは窓を背にするポジションに切り替えられ、右にアンリ、左にセヴリーヌとなる。
その後、会話が進むにしたがって、カメラはセヴリーヌの後ろ側になり、カットバック。
クライマックスで、再び窓を奥にするポジションとなり、カメラは時計回りで一周した形。
これは、過去にアンリがセヴリーヌに弄ばれたことの意趣返し、主客転倒の暗喩なのだろうが、そんなことに気づかなくても、クライマックス、カメラが元のポジションに戻った際の暗闇や?燭の炎の美しさを堪能すればいいでしょう。
何本かある蝋燭の火が消えるまでの長いワンショット。
見事。
(撮影は、サビーヌ・ランスランとフランシスコ・オリヴェイラ)。
唐突にドアの外、廊下に現れる鶏のショッキングさなど、一種のスリラーとして観て、楽しみました。
「オリヴェイラ、変な方だ」「でも好きでしょ」(笑)
ブニュエルの「昼顔」の続編ですが、ストーリー云々はさておき、単体でも充分に堪能できました。
とにかく撮影が凄すぎます。ピラミッド広場のジャンヌ・ダルクと騎馬の像の表情、バーのシーンの鏡、レストランの窓から見える夜景の画角と壁の絵画、そして蝋燭の揺らぎ...
撮影はサビーヌ・ランスラン あのアケルマンの「囚われの女」の撮影監督じゃないですか!納得です。鶏の歩行が微妙にぎこちなかったのは演技指導でしょうか。
食事のシーンは一言も会話がなく、カトラリーが食器に当たる音のみ。マナー講座の体をした無言の対局という感じでした。
怪優の面目躍如たるピコリの凄くいやらしい表情がいつまでも心に焼き付きました。
緊張感を持続させて観たせいか、69分の短さにもかかわらず、見終わってどっと疲れてしまいました。
ちなみにイケメンバーテンダーはオリヴェイラ監督の孫らしいです。娼婦役のレオノール・バルタックとは同監督の「コロンブス 永遠の海」で夫婦を演じています。
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