劇場公開日 2008年3月8日

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「心臓疾患をお持ちの方は、決してこの作品を見ないようお薦めしておきます。」バンテージ・ポイント 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0心臓疾患をお持ちの方は、決してこの作品を見ないようお薦めしておきます。

2008年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 スペイン・サラマンカ、マヨール広場で起こるアメリカ大統領の狙撃事件。その事件が起こって、解決するまでのわずか1時間程度に起きるクライシスを描いた作品です。
 『24』が24時間を追いかける作品であるのに、こちらは90分に1時間の緊張をいっぱい詰め込んだ作品になっています。『24』ワンシリーズの通しを90分で見たような密度の濃い作品でした。

 緊張感は半端なものではありません。
 始まってすぐ不意打ちのように大統領が暗殺され、大音響でマヨール広場が爆発。多くの死者を出してしまいます。いきなりの銃音と爆発音に思わずのけぞるくらい驚きました。ここからストーリーは、現場に関わった8名の視点から、事件の顛末を解明していきます。ほぼ10分少々の短い時間の中で、くどいように大統領を紹介する地元市長の演説が繰り返されるので、飽きてくるのではと思われるでしょう。
 けれども8回にわたる暗殺シーンをリピートする中で、徐々に真実に向けて、事件に関わってきた人物とその背景を明らかにしていくので飽きがきません。そして8人それぞれのシーンが次のシーンの重要な複線になって、「どうなるの」「そう来たか!」と観客の注意と期待感を逸らさないようになっているのです。
 「HEROS」のような群像劇では、立ち上がり登場人物の説明シーンが続き、盛り上がりに欠けます。この作品は、8人のシーンのリピートの中で、だんだん繋がりが見えてきて飽きさせませんでした。スピード感溢れるこの監督の演出はすごいし斬新と思いました。
 特にすごいのは、テロ犯人とバーンズのカーチェイスシーンです。スピード感やデンジャラスさは群を抜いており、これまでのカーチェイス作品でベストワンと言っていいでしょう。

 ただ惜しいのは、もう少し大統領の身代わりとなって撃たれて、復帰したバーンズの内面にある葛藤や恐怖感を描いて欲しかったです。

 あまりの緊張感で、心臓疾患をお持ちの方は、決してこの作品を見ないようお薦めしておきます。

流山の小地蔵