劇場公開日 2008年2月16日

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「好きよ!キャプテン」奈緒子 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0好きよ!キャプテン

2021年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 意外なことにポルノグラフィティにとって初の映画主題歌となるらしい。しかも日活の映画なので、なぜかロマンを感じてしまう。ストーリーがほとんどストレートであり、伏線や味付けもへったくれもないのですが、タスキを繋ぐだけでここまで感動できるものなんだと驚いてしまうほど。しかし疑問は残ったまま・・・なぜタイトルが“奈緒子”なんだ?

 足の速い少年が高校生となり、短距離から駅伝ランナーへと転向してしまうことにも驚かされますが、原作は漫画。そんなのたいしたことありません。心理描写も薄いままで、なぜ駅伝がいいのか?などという理由は一切説明されない。そこに仲間がいたからか?父親の死を6年経った今でもふっ切れないのか?とにかく走ることが生甲斐なんだろうと、納得もせずのめり込んでしまうのです。

 上野樹里演ずる奈緒子は、天才ランナー雄介(三浦春馬)の父親が亡くなったのは自分のせいだと罪の意識を残したまま彼と再会。過去を背負ったまま明るさを取り戻せない役であるだけに、高校生役がきつくなってきた彼女でもバランスが取れていたのかもしれません(設定では2歳上)。そして、父の死の原因が奈緒子であると思い続け、雄介もまた時間が止まったままなのですが、彼女の性格とは逆に、空虚さを感じるほど明るく振舞っているのです。

 波切島高校の陸上部員は7人+マネージャー1人。6人で走る駅伝なので補欠が1人という厳しい数だ。その中でキーパーソンとなっていたのが1年の吉崎(タモト清嵐)。最初はえなりかずき2世かと感じたほどでしたが、クライマックスの大会ではなんと逞しく感じられたことか。他の生徒たちも十分に個性的だったし、鶴瓶監督が「雲になってみんなを見ていたい」と言った言葉も納得できるのです。

 上野樹里と三浦春馬は個々の心理描写も弱いし、6年前の事故を起因とする確執もそれほど訴えてくるものじゃなかった。もしかすると原作のほうが“奈緒子を赦す”というテーマが伝わってくるのかもしれません。そんな中、汗だくになった高校生たちに爽やかな風を吹かせてくれたのが女子マネージャーである佐津川愛美。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』のまんが少女とは思えないくらい明るさでした。

【2008年2月映画館にて】

kossy