「霧=理解の出来ない物」ミスト samurai_kung_fuさんの映画レビュー(感想・評価)
霧=理解の出来ない物
人の恐怖というのは想像を絶する物事へ向かうものだ。
子供が暗闇に恐怖するは、闇自体が恐ろしいのではなく闇の中に何がいるか解らないから恐ろしいのだ。成長するにつれ、闇は単に光りがあたらない場所でしかない事に気付くと闇に対する恐怖は消える。そうやって少しづつ恐怖する事柄が減っていくのが『成長』である。
しかし、どれほど成長しようとも恐怖する事じたいは無くならない。世の中というのは理解できない事だらけなのだ。
「ミスト」劇中の霧はそういった「理解不可能」の象徴である。
白く視界をふさぐ先に何がいるのか?どんなバケモノがいるのか?どの程度近くにいるのか?どこまで続いているのか?
情報を遮断された世界で人は恐怖におののくしかなくなる。
恐怖から生まれるものもある。共通の恐怖の対象に連携して生き延びようとする絆。
漠然とした恐怖を「天罰」と名付け克服しようとする信仰。そして恐怖の信仰からたやすく生まれる狂気。
この「ミスト」は世界を包む理解不能に対する人間の愚かさをあまりに克明に描いた事で一部の賞賛と、大多数の酷評を得ることになった。
それは、理解不能な物を「ヒドいものだ!」と名付け安心したいという信仰と、信仰の生む狂気である。
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